アーティスト主体のアートフェアとして、「大阪からアジアへ、アジアから大阪へ」をテーマに2015年にスタートした「UNKNOWN ASIA」。2020年はコロナ禍の影響でオンラインのみの開催となりましたが、2021年10月に開催された「UNKNOWN ASIA 2021」は、オンラインと実会場での展示を組み合わせたハイブリッドなアートフェアに進化しました。ここでは、会場でインタビューをおこなった山中智郎さんと土屋靖之さんをご紹介します。
山中 智郎 Tomoro Yamanaka
スポンサー賞(サンクラール賞)、審査員賞(小林功二賞、谷口純弘賞)、レビュアー賞(大城崇聡賞、ロケット・ジャック賞、渡辺良隆賞)受賞 ※スポンサー賞受賞者には、各スポンサーとコラボレーションする機会が副賞として与えられます。
昨年、「UNKNOWN ASIA 2020」でオーディエンス賞を受賞した山中智郎さんは、ハイブリッドでの招待出展。アートフェアの参加自体、今回で2回目だという期待の若手作家です。昨年の受賞の影響もあるのか、注目度が高く、ブースには常に鑑賞者が訪れていました。
──UNKNOWN ASIAに出展するようになった動機は何でしょうか?
アジア各国の方々にアプローチできるのがいいと感じました。ゆくゆくはアジアのアートとして西洋諸国に持って行きたいので、そのためのコネクションを作る場になると思いました。
──オンラインのみで開催された前回と、今回のハイブリッドとの違いはどのようなところに感じますか?
フィジカルの展示では、多くのお客さんとコミュニケーションをとりながら、絵をみてもらえると思いました。オンラインだとページが重くなるので画質に制限があり、細部まで観られないのですが、フィジカルで観ると細かい質感やサイズ感が伝えられます。今回のUNKNOWN ASIAオンラインでは、アニメーション付きの絵を展示しました。こういう挑戦もオンラインならではなので、どちらも良かったと思います。
──作品のコンセプトをお聞かせください。
作品のコンセプトは現代におけるヒーローの再定義です。近年作っている「BUDH」(:芽生え)シリーズは堂々とした佇まいで邪気と戦う仏教的なヒーローたちです。
自分に足りないところや憧れ、欲望との向き合い方を表現しています。幼少期からみてきたアニメや戦隊ヒーローなどの元を辿っていくと仏教的なモティーフ(毘沙門天や阿修羅など)に行き着くと仮定して、その仏教的なヒーローたちに自分なりの美のあり方や正義の形をアウトプットして新しく再定義し直しています。
メッキが剥がれたり、汚れたようなテクスチャは、くすみのない目の輝きと対比させて、時間の経過に関わらず、確固たる意志を持つという意味で描いています。原画作品はすべてデジタル上で元絵を作って、写経するように、もう一度(キャンバスなどに)描きなおしています。二度手間だけど必要なプロセスです。
──デジタルで作ってからキャンバスに描くのには、特別な意味があるのでしょうか?
今はなるべく理性的に描きたい時期なので、いきなり描くとその時の気分で突拍子もないモティーフを入れてしまったりするので、そうならないようにデジタルで一旦完成させて、吟味してキャンバスに描き直すようにしています。
──仏教的なモティーフが多いのは、もともとそうしたものに興味があったのでしょうか?
僕は宮崎県出身なのですが、地元には神仏習合の田舎特有の雰囲気があります。ある種の神聖さや、自然に対する敬意、金銭的な欲望にまみれていない感じです。小さい頃からかっこいい仏像や神話の神様の説話に興味があって、敬虔な仏教徒ではないけど哲学的なところはかなり影響を受けていると思います。自分自身もまだ発展途上で欲にまみれた存在だし、現状を描くべきだと思ったので、わざときらびやかに着飾るように装飾具を描いています。これから10年、20年と活動を続けていくにつれて、悟りを開いた釈迦のように装飾が取れてもっと簡素、質素になっていけたら……と思います(笑)。
──作品が作家の年齢とリンクするように変わっていくのは面白いですね。
はい。体験型の作家です(笑)。今描いている人物の年齢感もだいたい自分と同じくらいですね。
──絵の中の主人公たちも年を重ねていくのでしょうか?
できればそういう要素も入れたいです。彼らが大人になったバージョンや、集合絵、ストーリーのある絵なども、今後大きいキャンバスで作れたらと構想しています。
■山中智郎
Instagram https://www.instagram.com/yamanakatomoro/
土屋 靖之 Yasuyuki Tsuchiya
レビュアー賞(カルドネル佐枝賞、飯野マサリ賞)受賞
文房具を材料に作品を制作する土屋靖之さんは、昨年の「UNKNOWN ASIA 2020」にも出展されていました。
──どのような作品のコンセプトでしょうか?
普段は会社員をしているのですが、コロナ禍で在宅勤務になって、何事もオンラインで処理され、ペーパーレスで完結するようになり、文房具を使わなくなりました。今後、文房具はどんどん使われなくなっていくだろうと思い、文房具たちにアートという新しい活躍の場を提供するというコンセプトで制作した作品です。
──そのコンセプトや、作品に対する鑑賞者の反応はいかがですか?
作品の見た目で「なんだろう?」と興味を持ってもらえますね。「文房具なんですよ」と言うと「え?そうなの?」と一歩近づいて観てもらえます。コロナ禍で、というコンセプト以前に「文房具」というのが興味を持ってもらえるひとつのキーワードになっているのではないでしょうか。
──UNKNOWN ASIAに参加するようになった理由をお聞かせください。
5年ぐらい前からアートスクールに通って現代アートを制作していて、こうしたアートイベントには年1回程度出展することを目標に制作しています。
──会社員とのことですが、いつ制作されているのでしょうか?
主に週末です。平日の夜も時々作っています。
──今回のUNKNOWN ASIAでの成果目標は何ですか?
一応価格は設定していますが、この場で買ってもらうことが目的ではなく、興味を持ってもらえて、どこかのギャラリーで企画展をする際に声をかけてもらうことなどが目的です。
土屋さんは「UNKNOWN ASIA」の他にアートフェア「Independent Tokyo」にも参加されています。2021年には初個展「Bang the Bung」が開催されました。
■土屋靖之
Instagram https://www.instagram.com/yasuyuki_tsuchiya/
美大出身で早くからアーティストの道を歩んでいる人もいれば、社会人として働きながらアートを学び、週末を利用して活動に励むバイタリティあふれる人も。様々な経歴の作家がそれぞれの持ち味を活かして作品をアピールしていました。
次回「UNKNOWN ASIA 2021 出展者インタビュー Vol. 2」(2/13更新予定)に続きます!
前回「 [レビュー]UNKNOWN ASIA 2021」はこちら
次回「UNKNOWN ASIA 2021出展者インタビューVol. 2」はこちら
■紀陽銀行presents UNKNOWN ASIA 2021 開催概要
【オンライン】
・日程:2021年10月9日(土)〜10日(日)
【実会場】
・日程:2021年10月16日(土)〜17日(日)/ VIP PREVIEW:15日(金)
・会場:ナレッジキャピタル コングレ コンベンションセンター
・住所:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 B2F
・主催:UNKNOWN ASIA実行委員会 / digmeout / ASIAN CREATIVE NETWORK(ACN)
・エグゼクティブプロデューサー:高橋亮
・特別協賛:紀陽銀行
・URL:https://unknownasia.net/