絵画空間の可能性に挑戦しつづけた辰野登恵子(1950〜2014)。絵画のもつ力を信じ、一貫して平面による抽象表現を追求した真正の画家である。神戸市のBBプラザ美術館で開催中のこの展覧会は、辰野の版画制作に焦点が当てられている。
辰野の「版」表現は、東京藝術大学大学院在学中の1970 年代初め、絵画に表現のひとつとしてシルクスクリーン技法を取り入れたことに始まる。以来、油彩やアクリルによる絵画制作と往還するかたちで、シルクスクリーン、リトグラフ、銅版画、木版画と、豊かな発想力をもって「版」による表現へ果敢に取り組んでいった。
「版」を介することで、必然的に自身の意図と距離を置ける版画は、辰野にとって創作上の思索を深める媒体であり、いわゆる余技としての版画、複数性を特徴とする版画とは違う意味合いを持っている。
1980~2010年代の版画(シルクスクリーン・リトグラフ・銅版画・木版画)45点を中心に、油彩画、アクリル画、ドローイング、陶など、合計55点が展示されるこの展覧会。辰野の理性と感性の葛藤の延長線上にある、質としての空間やかたちの模索、身体的知覚による「版」表現を、ぜひ間近で感じてほしい。
作家の現実感、生の感覚が見えてこそ絵はおもしろいのです。―辰野登恵子 (『版画芸術』1998年より)
[information]
辰野登恵子 ー身体的知覚による版表現
・会期 2022年4月19日(火)~ 6月19日(日)
・会場 BBプラザ美術館
・住所 兵庫県神戸市灘区岩屋中町4-2-7 BBプラザ2F
・電話 078-802-9286
・時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
・休館日 月曜日
・観覧料 一般400円、大学生以下無料
※65歳以上の方、障がいのある方とその付添いの方1名は半額
・URL https://bbpmuseum.jp