アーティスト

菊川天照インタビュー
──「楽しい!」を探して

《ねこ土偶》2024年画像

《ねこ土偶》2024年

 

おびただしい数の「点」でモチーフの表面を埋め尽くす作品が特徴の菊川きくがわ天照てんしょう。彼は、6月21日からREIJINSHA GALLERYで開催される「猫会議 2024」の出展作家の一人だ。
百兵衛編集部は、菊川にインタビューし、独自のスタイルが生まれたきっかけや制作の裏側について話を聞いた。

 

「点」の群れで動物を描く

 

《ヘビ》2018年画像

《ヘビ》2018年 ※参考作品

 

──菊川さんの作品は、「点」が特徴的ですね。これまで、どのような変遷があったのでしょうか?

昔から、細かいもので余白を埋めることが好きだったんです。
もともと細かい写実的な絵を描いていたのですが、在籍していた大学の自由な環境もあり、現在の作風になりました。

学生の時は「絵としてのおもしろさ」みたいなものを意識していました。きれいに整えられた画面といいますか、そういった作品を目指していたんですが、最近は「人間味が出ている作品」が良い作品なのではないかと考えています。手作り感のあるものに「人間味」を感じるんです。

 

──使っている画材も特徴的ですね。なぜペンを使い始めたのですか?

型にはまった描き方ではなく「自由に描きたい」と思い、絵具よりも気軽な気持ちで描けるペンに行き着きました。
ペンを使った制作は、インスピレーションが湧いた時に頭の中のイメージをすぐに絵にできるので、気に入っています。私の制作では「テンポ」が大事なんです。絵具だと乾くのを待ったり色を作ったりする時間がありますから。
ちなみに、ペンはどこでも買える普通のペンです。特殊なものだと手に入れにくいこともあるので、店でよく売っているペンを使っています。

 

──実際に点を描いている時は、どういった感覚なのでしょうか?

説明するのは難しいですね……。自分でも不思議なんですが、点を描いていると、頭の中のスペースが広がっていくような感覚になるんです。

 

──そうなのですね。下描きやスケッチ通りに点を描いていくのですか?

下描きはしますが、おおまかな形に沿って、頭に浮かんでいるイメージそのままに点を描いていくという感じでしょうか。
制作は、頭の中にあるイメージを具現化する作業で、いかにそのイメージに近づけるか、ということが私にとっては重要なんです。
そして、その制作を自分が「楽しい」と感じることが、最も大事だと思っています。根源的な創作の原動力は幼い頃のままで、何も変わってません。

《tako(ピンク)》2019年画像

《tako(ピンク)》2019年 ※参考作品

 

──菊川さんの作品は、動物がデフォルメされている姿も印象的です。

実は、動物が好きで描いているというのとは少し違うんです。モチーフとして、動物の「かたち」がおもしろいというか。ゾウの鼻やタコの足など、おもしろいと思う「かたち」に注目してデフォルメしています。

言葉が通じなくても、動物の絵を描けばそれが何か分かるじゃないですか。それがおもしろいんです。
だから、その動物の実際の見た目とかけ離れすぎてしまわないよう、意識して描いています。

 

──完全に抽象化はしない、ということですね。
ところで、インスピレーションは何から得ることが多いのでしょうか?

日常生活の中でボーッとしている時に着想することが多いですね。たとえば壁の汚れを見て「この形いいな」とか「この色いいな」とか思ったり……。何も考えていない時間に、ふと目に留まったり思いついたりすることが、作品につながっていくんです。

 

「猫会議 2024」について

猫会議2024

 

──今展で出品されるのは主に立体作品ですが、こちらについても教えてください。
絵画の制作ではイメージを具現化する作業だとおっしゃいましたが、立体作品はどうでしょうか?

立体もそれに近いですね。今回発表する『いただきま〜す』は、スケッチなどせずに粘土を触りながら思いつくままに作ったものです。
実は、初めはきちんとスケッチをして、その通りに作っていたんですが、なんとなく気に入らなくて。力まずに作る方法が、自分には合っていたようです。

《いただきま〜す》画像

《いただきま〜す》2024年

 

──立体作品を作られるようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?

コロナ禍で家にいる時間が増えた頃に、粘土で何かを作ろうと思ったことがきっかけです。その時は、部屋に飾るオリジナルのフィギュアのようなものを作ろうと思っていたので、作品になるとは考えてもいませんでした。ただ、作っているうちにだんだんと「楽しい!」「これだ!」と思い始めました。

 

──来廊される方に、作品をどのように鑑賞してもらいたいですか?

「おもしろい」と感じてもらえたらいいなと思います。「うまい」とか「すごい」よりも、「おもしろい」とか「楽しい」とか思ってほしいんです。
グループ展ですから、他の作家との「猫」の捉え方の違いも楽しんでもらえたらと思ってます。

《ネコーテムポール》2024年

 

──今後、新たに挑戦したいことなどがあればお教えください。

色鉛筆も最近使うことの多い画材ですが、大きな作品にはまだ着手できていないので、100号やそれ以上の作品を描きたいと思います。色鉛筆で大きな画面を埋めたいんです。
ペンよりも時間がかかりますし、減りも早いのですが、想像するととてもワクワクします!

 

ユニークな菊川作品と出会える「猫会議2024」。彼と他の10出展人が有する作家の世界観の融合を、ぜひ会場で楽しんでほしい。

 

[Profile]
菊川天照
Tensho Kikugawa

1996年
熊本県生まれ
2013年
第5回SOJOビエンナーレ2013審査員特別賞受賞(崇城大学ギャラリー/熊本)
2016年
第18回雪梁舎フィレンツェ賞展(雪梁舎美術館/新潟、東京都美術館)
2017年
FACE 2017損保ジャパン日本興亜美術賞展(東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館/東京)
FACE展選抜作家小品展2017(REIJINSHA GALLERY/東京)
2018年
REIJINSHA GALLERY'S EYE Vol.1(REIJINSHA GALLERY/東京)
18thアートinはむら展(ゆとろぎ美術館/東京)
個展(REIJINSHA GALLERY/東京)
2019年
東京学芸大学中等教育教員養成課程美術専攻卒業
東京学芸大学大学院教育学研究科教科領域指導美術・工芸プログラム入学
2021年
pickup2021(REIJINSHA GALLERY/東京)
二人展(アルーク阿佐ヶ谷/東京)
東京学芸大学大学院教育学研究科教科領域指導美術・工芸プログラム修了
2023年
個展「点と形といきものたち」(Art Gallery TOKYU PLAZA GINZA/東京)
2024年
猫会議2024(REIJINSHA GALLERY/東京)
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現在、東京都にて制作

[information]
猫会議 2024
・会期 6月21日(金)~7月5日(金)
・会場 REIJINSHA GALLERY
・住所 東京都中央区日本橋本町3-4-6 ニューカワイビル 1F
・電話 03-5255-3030
・時間 12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
・休廊日 日曜、月曜、祝日
・URL https://linktr.ee/reijinshagallery

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