展覧会

田名網敬一 記憶の冒険

会場
国立新美術館
会期
8/7(水)〜11/11(月)

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展覧会ポスタービジュアル

本展ポスタービジュアル ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA


60年以上におよ
ぶその活動を振り返る
田名網敬一初の大規模回顧展

東京・六本木の国立新美術館で、8月7日から11月11日まで「田名網敬一 記憶の冒険」が開催される。これは、国際的に高い評価を得る日本人アーティスト、田名網敬一(1936〜)の初となる大規模回顧展。
田名網は幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られている。この展覧会は当時の資料を含め、彼が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、その60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めてひもとこうとするものだ。国立新美術館の広大な展示室に「橋」をモチーフとした巨大インスタレーションが出現するなど、初公開の最新作を含む約500点が紹介される。

田名網敬一《死と再生のドラマ》画像

田名網敬一《死と再生のドラマ》 2019年
顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 200×400㎝(4枚組)

©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

 


田名網は武蔵野美術大学デザイン科に入学後、篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らと出会い、彼らの活動に最前線で触れながら、1957年には日本宣伝美術会主催の日宣美展で特選を受賞した。在学中からデザイナーとして仕事を依頼されるようになり、卒業後は博報堂に入社。2年ほどで退職した後は画廊での展示に固執せず、1966年にアーティストとしての出発点ともいえる作品集『田名網敬一の肖像』を出版する。アンディ・ウォーホルの美術やデザインといった一つのメディアに限定しない制作方法に大きな刺激を受け、「イメージディレクター」と名乗るようになったのもこの頃のことだ。その後、《1967 東京》などのシルクスクリーンによるポスター、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画などの作品を精力的に手掛けるようになった。

田名網敬一《1967 東京》画像

田名網敬一《1967 東京》 1967年 シルクスクリーン/紙 103×72.8㎝
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《Wonder Woman》画像

田名網敬一《Wonder Woman》 1967年 インク、コラージュ/紙 38.5x48.5cm
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

1960年代後半からは音楽や映画、文芸に係る多くの雑誌のエディトリアルデザインをおこない、1975年には日本版『PLAYBOY』の初代アートディレクターに就任。この頃、並行して実験映像も制作し、映像作家・松本俊夫と上映会を開催するなど、田名網は表現の幅を着実に広げていった。
1980年代は中国への旅行と1981年に経験した約4カ月にわたる入院中に見た幻覚をきっかけにして、《昇天する家》などの東洋的な楽園や奇想の迷宮を思わせるイメージを表現するようになる。 また、1991年には京都造形芸術大学の教授に就任。後進の育成にも携わった。

田名網敬一《昇天する家(C)》画像

田名網敬一《昇天する家》 1987年 木、ラッカー 101x63.5x24cm
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

2000年頃からは、これまで田名網自身の作品に現れていたさまざまなモチーフが再び組み合わされることで、《気配》のような、より複雑でダイナミックなイメージが展開されていく。田名網にとって作品制作とは過去の記憶をたどっていく作業であり、記憶が自身の中で無意識のうちに変化していく様子を捉えようとする行為でもあるのだ。

田名網敬一《気配》画像

田名網敬一《気配》 2022年
デジタルカンヴァスプリント、雑誌の切り抜き、インク、アクリル絵具、クリスタルガラス/カンヴァス 194x130×4cm
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

88歳となった今も旺盛な創作活動を続ける田名網の存在は、世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了し続けており、コラボレーションを求める声があとを絶たない。その理由は、60年以上にわたる活動の中で、彼自身が常に自らの表現方法を刷新し続けてきた稀有な感性を持つアーティストであるからといえるだろう。また近年、田名網は海外文化を独自に受容した戦後日本の作家としても世界的に評価が進んだこともあって、ニューヨーク近代美術館 (アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ)に作品が所蔵されるようになった。

多方面から注目が集まる田名網が現在まで探究を続けている、虚実が入り混じった記憶のコラージュのような作品世界を存分に体感できる待望のこの展覧会。来場者にとっては、⾃分と出会う場、⾃分と向き合う時間として自らの心に届く機会となるだろう。

田名網敬一《ピカソ母子像の悦楽 No.005》画像

田名網敬一《ピカソ母子像の悦楽》 2020 / 2021年
アクリル絵具/カンヴァス 41×31.8×2㎝ ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

展覧会の見どころ

1. 日本の戦後文化史と密接に結びついた作品
アンディ・ウォーホルから影響を受けて制作された日本最初期のポップアートとも呼べる「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)や、アメリカの『Avant Garde』誌が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)、テレビ番組『11PM』のために制作されたコラージュの手法によるアニメーション《Good-by Marilyn》(1971)など、戦後日本で展開されたカウンターカルチャーを物語る作品の数々が出品される。

田名網敬一《ORDER MADE!!》画像

田名網敬一《ORDER MADE!!》 1965年 シルクスクリーン/紙 78.9x109.4cm
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《Good-by Marilyn》画像

田名網敬一《Good-by Marilyn》 1971年 16ミリフィルム(デジタル版)/4分23秒

制作・アニメーション:田名網敬一、歌:平山三紀「真夏の出来事」
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

2. 増幅を続ける「記憶」
近年、自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作している田名網。幼少期に体験した戦争や生死をさまよった大病の経験を大きなきっかけとし、「人間は自らの記憶を無意識のうちに作り変えながら生きている」という説に基づいて、自身の脳内で増幅される「記憶」を主題に創作活動を続けている。「記憶の冒険」と題されたこの展覧会では、未発表の新作に加え、彼が70年代から断続的に記録してきた夢日記やドローイング、関連するインスタレーションも展示することで、尽きることのないその創造力の源泉に迫る。

展示風景:田名網敬一「記憶の修築」

《記憶の修築》展示風景:「田名網敬一 記憶の修築」NANZUKA、東京、2020年
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

3. 変幻自在なコラボレーション
田名網は、その長いキャリアを通して多種多様なクライアントワークやコラボレーションをおこなってきた。Mary Quant、adidas、JUNYA WATANABE、Ground Yなどのファッションブランドや、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPSといったミュージシャンと協働する一方で、ウルトラマンなどのキャラクターや生前交流があった赤塚不二夫とコラボレーションした作品も制作している。今回の展覧会では、田名網のデザイナーとしての活動にも焦点を当て、当初からコラボレーションの意識を強く持ち、それによって生じる化学反応から新たな作品を作り出していこうとする彼の仕事についても紹介される。

田名網敬一《RADWIMPSワールドツアー2024のためのアートワーク》画像

田名網敬一「RADWIMPS WORLD TOUR 2024 “The way you yawn, and the outcry of Peace”」のためのアートワーク、2024年
シルクスクリーン、ラメ/紙 51.7×41.7cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA


■田名網敬一 プロフィール

ポートレイト「パラヴェンティ:田名網 敬一」

「パラヴェンティ:田名網敬一」プラダ青山店、東京、2023年
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

1936年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
アートディレクター、実験映像及びアニメーション作家、アーティストなど、そのジャンルを横断した類まれな創作活動により、他の追随を許さない地位を築いている。近年の田名網の主要な展覧会として、「パラヴェンティ:田名網敬一」(プラダ青山店/東京、2023年)、「マンハッタン・ユニヴァース」(ヴィーナス・オーヴァー・マンハッタン/ニューヨーク、2022年)、 「世界を映す鏡」(NANZUKA UNDERGROUND/東京、2022年)、「Keiichi Tanaami」(ルツェルン美術館/スイス、2019年)、「Keiichi Tanaami」(ジェフリー・ダイチ/ニューヨーク、2019年)。また、グループ展としてポップアートの大回顧展「インターナショナル・ポップ」(ウォーカー・アート・センター、ダラス美術館、フィラデルフィア美術館/アメリカ、2015-2016年)、「世界はポップになる」(テート・モダン/ロンドン、2015年)などがある。パブリックコレクションに、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ナショナル・ポートレート・ギャラリー(アメリカ)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ) など多数。

田名網敬一《綺想体》画像

田名網敬一《綺想体》 2019年 FRP、鉄、アクリル・ウレタン塗料、金箔 301×100×100㎝
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

 

[information]
田名網敬一 記憶の冒険
・会期 8月7日(水)~ 11月11日(月)
・会場 国立新美術館 企画展示室1E
・住所 東京都港区六本木7-22-2
・時間 10:00〜18:00(毎週金・土曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
・休館日 毎週火曜日
・観覧料 一般2,000円、大学生1,400円、高校生1,000円
※中学生以下は入場無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・展覧会URL https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/keiichitanaami/

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