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うつくしい 宝もの
特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」と題した展覧会が、東京藝術大学大学美術館で開催されている。
ここで展覧されるのは、宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室の珠玉の名品に、東京藝術大学のコレクションを加えた82件の多種多様な作品群。それらを通じて、「美の玉手箱」をひも解き、日本美術の豊かな世界を鑑賞してもらおうというものだ。
──皇族に受け継がれてきた珠玉の名品
三の丸尚蔵館は1992年に皇居東御苑内に建設され、翌93年に開館した。その歴史は、1989年に天皇陛下(現在の上皇陛下)と皇太后陛下(香淳皇后)が、昭和天皇のご遺品を国に寄贈したことに始まる。皇室に代々受け継がれた絵画・書・工芸品などの美術品類に、皇族からのご寄贈品も加わり、現在は約9,800点にのぼる品々を収蔵している。
なお、同館は現在、新施設への移行準備のため休館中。新施設の開館は来年秋に予定されている。
──数多の芸術家を輩出してきた歴史ある美術大学
東京藝術大学は、1887年の東京美術学校(東京藝術大学の前身)の設置に先立つ時期から、美術教育に関する「参考品」として135年以上にわたって収集されたコレクションを基盤に設立された。現在の収蔵品は3万件余りに達し、資料の収集・研究・保存・公開といった美術館の基本的な活動に加えて、制作と教育研究の現場である芸術大学という特質を合わせた、実験的な美術館を基本理念としている。
展覧会の見どころ
日本美術を分かりやすく「ひも解く」
「文字からはじまる日本の美」「人と物語の共演」「生き物わくわく」「風景に心を寄せる」のテーマごとに、日本美術の世界をわかりやすく辿ることができる。
各時代を象徴する多彩な作品が並ぶ本展は、まさに“体験する教科書”と言えるだろう。
宮内庁三の丸尚蔵館収蔵の国宝全5件公開
昨年、5つの作品が宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された。国宝指定後、それらを初めて公開する。
◎〈春日権現験記絵〉
… やまと絵の集大成として名高い絵巻/通期展示(巻四:前期展示②/巻五:後期展示②)
◎〈蒙古襲来絵詞〉
… 元寇の様子を描いた絵巻/通期展示(前巻:前期展示②/後巻:後期展示②)
◎〈唐獅子図屏風〉
… 桃山時代を代表する狩野永徳の大作/前期展示①
◎〈動植綵絵〉
… 江戸時代の画師・伊藤若冲の代表作/後期展示①
◎〈屏風土代〉
… 平安時代三跡の一人・小野道風の書/後期展示②
伊藤若冲「動植綵絵」10幅公開
さまざまな生き物や植物を緻密に描いた伊藤若冲の傑作「動植綵絵」。
これは、あらゆる生き物の尊い生命、生きているからこその美しさを表現しようと、約10年をかけて描かれた、全30幅の大作だ。動植物の構図を熟慮し、自身が学んだ絵具の使い方や描き方を駆使して独特な世界観を表わしている。色鮮やかに表現された雄鶏が圧巻の〈向日葵雄鶏図〉や、70種類近くの虫が画面いっぱいに描かれた〈池辺群虫図〉など、本展では10幅を一堂に公開。
宮内庁三の丸尚蔵館、そして東京藝術大学大学美術館。ここで紹介してきたような歴史的背景をもつ両館だからこそ実現できた本展で、日本美術の“宝もの”の魅力を存分に味わっていただきたい。
[information]
特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」
・会期 2022年8月6日(土)~9月25日(日)
※会期中、作品の展示替えおよび巻替えあり
前期展示:① 8月6日(土)~8月28日(日)/ ② 8月6日(土)~9月4日(日)
後期展示:① 8月30日(火)~9月25日(日)/ ② 9月6日(火)~9月25日(日)
・会場 東京藝術大学大学美術館
・住所 東京都台東区上野公園12-8
・時間 10:00〜17:00、9月の金・土曜日は19:30まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
・休館日 月曜日(ただし、9月19日は開館)
・観覧料 一般2,000円、高校・大学生1,200円、中学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその介助者1名は無料
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・URL https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/