何が変わり、何が変わらず伝えられたのか?
多様で独自性に富んだ琉球・沖縄の文化を、
復帰50年の節目に見つめ直す展覧会。
1972年5月15日午前0時、1945年から続いた沖縄のアメリカ統治時代が終わりを告げた。それから50年を経た今年、沖縄県は日本復帰50年を迎えたのである。
現在の日本の若者の中には、沖縄がアメリカの統治下に置かれていたことを知らぬ者もいるという。彼の地が琉球と呼ばれた時代から、多様で独自性に富む文化を持っていたことも今や忘れられつつあるのかもしれない。
かつて琉球王国として独自の歴史と文化を有した沖縄は、明治以降の近代化や先の戦争という困難を乗り越え、現在もその歴史、文化を未来につなぐ努力を続けている。復帰50年を記念して5月3日から東京国立博物館で開かれている特別展「琉球」。王国時代の歴史資料・工芸作品、国王尚家に伝わる宝物に加え、考古遺物や民族作品などのさまざまな文化財が一堂に会する展覧会だ。
展覧会の見どころ
1. 琉球国王、尚家400年の貴重な宝物が一堂に
金銀、水晶など色とりどりの玉で飾られた「玉冠」をはじめ、王族が身につけた格調高い衣裳や刀剣、王国の中枢である首里城を華やかに彩った漆器や陶磁器など、国宝の「尚家宝物」が鑑賞できる。
2. 100件を超える国・県・市指定文化財が集結
およそ11世紀末頃にはじまる、いわゆる古琉球時代の交易の様子を伝える出土品や歴史資料から、琉球王国の伝統的な技を今日に復活させた模造復元作品に至るまで、琉球・沖縄の文化財が過去最大規模で紹介される。
3. 琉球の美と技を今に伝える、圧巻の模造復元作品
沖縄県では、平成27年度より最新の科学分析や研究情報に基づいて、失われた文化遺産の模造復元がおこなわれてきた。この事業によって制作された復元作品も多数展示。展覧会の締めくくりで、その成果と事業に関わった多くの人びとの想いまでもが感じられる構成となっている。
沖縄は、これまで多くの困難を乗り越え、その歴史と文化を未来につなぐ努力を続けている。1992年の首里城再建や、「琉球王国文化遺産集積・再興事業」による王国時代の手わざの復元は、人びとの地道な研究の積み重ねと、モノづくりの真実に迫る熱意によって実現したものだ。沖縄が1972年に復帰してからの半世紀は、まさに琉球・沖縄のアイデンティティーを取り戻すための歳月だったといえるだろう。
これまで琉球文化について知る機会がなかった方も、ぜひこの展覧会に足を運んでほしい。絵画、木彫、石彫、漆芸、染織、陶芸、金工など幅広い分野の展示品を通じて、琉球・沖縄の豊かな文化とその裏にある高い精神性に触れることができるはずだ。
[information]
沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
・会期 2022年5月3日(火・祝)~ 6月26日(日)
・会場 東京国立博物館 平成館
・住所 東京都台東区上野公園13-9
・時間 9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
・休館日 月曜日
・観覧料 一般2,100円、大学生1,300円、高校生900円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料(入館の際に学生証、障がい者手帳等の提示が必要)
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・URL https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/
●この展覧会は東京展の後、九州国立博物館(福岡県)に巡回します。
会期:2022年7月16日(土)~ 9月4日(日)