アート×ヒト×社会の関係をStudyする芸術祭
2023年1月28日から2月13日までの期間、グランフロント大阪や大阪府立中之島図書館をはじめとした大阪各所を会場に「Study : 大阪関西国際芸術祭 2023」が開催された。
この芸術祭は、2025年に世界最大級のアートフェスティバル「大阪関西国際芸術祭(仮)」の開催を目指し、「アートとヒト」「アートと社会」の関係性や、アートの可能性を検証し学ぶ(Studyする)ためのプレイベントだ。
昨年に続き2回目の開催となる今回は、関西に縁あるアーティストの展覧会をはじめ、国内外のギャラリーが出展し誰もが作品購入を楽しめるアートフェアを実施。さらにはレストランを会場に、期間限定で食とアートのコラボレーションを実現するアートダイニングなど、アートを『みる』『買う』『食す』『学ぶ』といった、多彩なプログラムが展開された。芸術祭会期の17日間で多くの来場者が訪れ、盛況のうちに幕を閉じたようだ。
このレビューでは2月10日から12日の3日間にわたって開催されたアートフェアについて紹介しよう。2022年のアートフェアを更に拡大させ、アートやクリエイティブ産業などのビジネス展示会も同時開催した本年は、グランフロント大阪 北館地下2階 ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターに、国内外から個性豊かなアートが集結した。
会場内には現代アートだけではなく、芸術性の高い家具や浮世絵を扱うギャラリーも見られた。2025年日本国際博覧会開催に向けて機運を高める、大阪のアートシーン。今回のアートフェアへの出展作家やギャラリーに話を伺った。
Relevant Object × gallery KITASHIRAKAWA × Ru-Pu
現代アートをメインに据えたギャラリーがひしめくなかで、唯一家具をメインに扱うこのブース。3つのギャラリー「Relevant Object」「gallery KITASHIRAKAWA」「Ru-Pu」は、今回のフェアに合同出展するだけでなく、それぞれが事前予約制のプライベートギャラリーを京都で運営している。1926(大正15)年に竣工した藤井厚二設計の旧喜多源逸邸を展示空間としたRelevant Object、ポール・ヘニングセンを中心に希少な絵画や調度品も扱うgallery KITASHIRAKAWA。2つのギャラリーは左京区北白川にあり、徒歩5分ほどで往来できる距離だ。また、東山区の清水五条のあじき路地に店舗を構えるRu-Puは、北欧ヴィンテージ家具と雑貨に加え、オリジナル家具デザインや家具の修繕もおこなっている。
ギャラリーステートメント
“20世紀の北欧ヴィンテージ家具を中心に、上質な建築空間と共に、照明器具、陶器等の実用性とアート性を持ち合わせたFunctional Artsを設えたプライベートギャラリーを運営。北欧家具は日本の伝統的な建築空間にとても相性が良く、また、多くの北欧デザイナーは日本固有の技術やフォルムなど、日本のデザインにインスパイアされた作品を多く輩出している。今回は、世界的にも有名なデザイナーであるポール・ケアホルムとポール・ヘニングセンの稀少なヴィンテージ作品に焦点を充て、日本の現代アートとの親和性を紹介する機会にもなると確信しており、更なる国内への普及と周知を目指した展示を構成する。”
──なぜこのアートフェアに出展しようと思われたのでしょうか?
日本ではアートフェアに家具を扱うギャラリーが出展するのは珍しいように思われるかもしれませんが、海外のアートフェアではデザインの部門があり、家具が出展されるのは一般的です。今回出展させていただけたことは、ようやく日本のアートフェアも海外に追いついてきたということではないでしょうか。
──展示をご覧になった方からはどのような感想をいただきましたか?
まだ初日なのでお客様からの感想ではありませんが、周りのギャラリーの方からは、家具にアートが加わると、全体が調和してより良い展示になったとコメントをいただきました。
──アートフェア出展を終えて
現代アートのフェアにおいて、ヴィンテージ家具というデザイン分野のセカンダリーマーケットを紹介することができたのは画期的なことでした。家具や照明器具は海外ではFunctional Artとしてマーケットも確立しています。時間に裏付けされた普遍的なデザインの価値の周知のために、また日本のアートフェアを海外のレベルに近づけるお手伝いとして、今後とも活動を続けていきたいと考えております。
■Relevant Object
ウェブサイト www.relevantobject.com
Instagram www.instagram.com/relevantobjectgallery/
■gallery KITASHIRAKAWA
ウェブサイト https://sites.google.com/view/gallery-kitashirakawa/kimura-inc
Instagram www.instagram.com/gallery_kitashirakawa/
■Ru-Pu
ウェブサイト www.ru-pu.com
Instagram www.instagram.com/ru_pu_scandinavianfurniture/
U-ku (中和ギャラリー CHUWA GALLERY)
兵庫県神戸市出身のU-kuは、神戸女学院大学英文学科を卒業後、一般企業勤務を経て2016年から本格的に作家活動をスタート。現在は神奈川県にアトリエを構え、個展開催や作品集の発行など精力的に活動している。アートフェア出展に至った、彼女の作品の魅力について尋ねた。
──水彩をメインの画材として使われているんですね。それはなぜでしょう?
一層目に水彩を置いて、その表情やにじみ・形を、二層目で用いるアクリルによって、より立体的に、奥行きをもたせています。
作品のコンセプトに「不随意性」という言葉を使っているのですが、自分がコントロールしづらい絵具、偶発的にできた形やにじみというものを、自分の人生の出来事と重ねています。人って誰しも自分ひとりの方針で生きていくことは不可能で、色んなものの影響を受けて今この場に立っている。それが水彩という素材を使うことによって、偶然できる色んなにじみや、色と色の混ざり方、外的要因を元にして自分が少しずつ決断をして、先に進んでいくことを作品として表現しています。
──作品のマチエールは、どのようなことを意識して制作しているのでしょうか?
下地を均等に塗りすぎないことを意識しています。水彩=紙が支持体という固定観念があると思うのですが、私はそこを払拭したいと考えています。水彩がしっかりと定着する下地材があるのですが、あえて下地をペインティングナイフなどを使って立体的にすることによって、水彩を塗った時に、水彩の持つ平坦な印象を塗り替えることができ、偶発的な立体感のある表現やにじみが生まれることになります。
──抽象画のように見えますが、モチーフとして具体的にイメージしているものはありますか?
実は、昔は抽象画が苦手だったんです。何かを感じ取らなければいけないというプレッシャーや、作家の想いを100%理解しないと感想を述べてはいけないんじゃないかという思いがあった。けれど、色々な抽象の作品を観ていく中ですごく器の大きい、懐の深い絵画のジャンルであるということに気づきました。
実は画面の中に小さな女の子を必ず描き込んでいるんです。独学で絵を描き、この抽象に小さなモチーフを加えるというスタイルで7年間ほど制作しています。抽象を苦手だと思っていた、中学高校時代の私と、抽象というものに好意的な私、両方とも蔑ろにしたくないのでこの表現に至りました。
「抽象画は難しい」と思った人でも、女の子がぱっと見つかった瞬間、その難しいという感覚は一瞬で消えてくれると思うんです。そのハードルを一つ超えるための役割、ヒントとして、ほんの小指の先ほどなんですが、女の子のモチーフを加えて描いています。そこが、私の作品の一番大きな特徴になると思います。
抽象かと言われると、半抽象になるんですが、もちろん抽象としても観ていただきたいので、女の子を主役としては描いていません。ただ作品を観た時に、「あ、なんかいる」というこの気付きが、主体的に見るきっかけになってくれたら良いと思います。
大人になるにつれて絵に苦手意識を持ってしまっている大人って、特に日本には多い気がしていて、そういう人たちにももっと身近なものとして感じてもらいたいです。
■U-ku
ウェブサイト http://u-ku-n-blue.com
Instagram https://www.instagram.com/ukuwatercolor
Twitter https://twitter.com/UWatercolor
中和ギャラリー CHUWA GALLERY
東京・日本橋に位置する中和ギャラリーはこれまで、韓国で開催されるアート光州に3回出展している。海外のアートフェアを経験したギャラリーは、Study : 大阪関西国際芸術祭 2023 / アートフェアでどのような感触を得ただろうか。
──アートフェアに参加された感想をお聞かせください。
私どもは今回、国内アートフェア初出展でした。
真っ先に感じたことは、外国人のお客様が少なかった点です。また、ご来場客が途切れた時間帯が時々ありましたので、他のギャラリーや作家さんと交流や情報交換ができたのもよかったです。
それ以外については「Study」と冠が付いている以上、様々な試行錯誤があって当然だと考えています。
──アートフェア参加の目的をお教えください。また、その目的は達成されたでしょうか?
目的はギャラリーとしての経験値を高めること、将来有望な作家の認知を高めることの2点でした。
私は国内アートフェアの雰囲気を体感できましたし、作家は新規の顧客を獲得できました。
どちらも充分に達成できたと考えています。
──このアートフェアに参加したことで、ギャラリーの今後の活動にどのような展望を抱かれましたか?
中和ギャラリーとしては今後もアートフェアの土俵で勝負できるのではという感触を得ました。
このフェアに関しては2025年の開催規模と内容に期待したいと思います。
■中和ギャラリー CHUWA GALLERY
ウェブサイト https://www.chu-wa.com
Facebook https://www.facebook.com/ChuwaGallery
Instagram https://www.instagram.com/chuwa_gallery
Twitter https://twitter.com/ChuwaGallery
ARTLOGUE マーケットプレイスでは、会期終了後も出展作品を閲覧することが出来る。ぜひ気になるアーティストやギャラリーをチェックしてほしい。
レビューVol.2(3月13日公開予定)に続く
[information]
Study : 大阪関西国際芸術祭 / アートフェア 2023
※このイベントはすでに終了しています。
・会期 2023年1月28日(土)〜2月13日(月)
・会場
梅田エリア:グランフロント大阪、ボンカリテ
中之島・北浜エリア:大阪府立中之島図書館、花外楼 北浜本店、THE BOLY OSAKA、ルポンドシエル
本町エリア:船場エクセルビル
西成エリア:kioku手芸館「たんす」、ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学、飛田会館
・出展ギャラリー 芝田町画廊、川田画廊、TRI-FOLD OSAKA、アートデアート・ビュー、春風洞画廊、アートコートギャラリー、KICHE、KEUMSAN GALLERY、Contemporary Tokyo、G.Gallery、Gallery IRRITUM Tokyo、Gallery Jeon、GALLERY ZERO、SPACE : WILLING N DEALING、NPOアート・オブ・ザ・ラフダイヤモンズ、RICOH ART GALLERY、Gallery OUT of PLACE、Satelites ART LAB、ヴォイスギャラリー+コンピューテーショナルデザイン研究室(中京大学工学部)、igu_m_art、Gomeisa GALLERY、ONBEAT Studio、ギャラリーMOS、COCO Gallery、中和ギャラリー CHUWA GALLERY、Wa.gallery、浮世絵 竹井事務所、ビーク585ギャラリー、GASHO2.0、神戸元町 歩歩琳堂画廊、Relevant Object × gallery KITASHIRAKAWA × Ru-Pu、WEZ KIYOSAKU、Shibayama Art Gallery、小山登美夫ギャラリー、MEDEL GALLERY SHU、二次元派
・特別展示 Metaverse Boundary メタバースの境界線-#study2、サキタハヂメ / Hajime Sakita
・主催 株式会社アートローグ
・URL https://artstageosaka.com