展覧会

写真という表現をもう一度 
──記録とアートの境界線

 

プレゼント

 

Lomo’Instant Automat Glass Ema Ichikawa Edition 画像

令和のフィルムカメラブーム

写真は記録?それともアート?

 

SNSの普及によって、写真というメディアは我々にとってより一層身近なものとなった。最近は特に若者たちを中心に、スマートフォンに搭載されているカメラでは飽き足らず、フィルムカメラに挑戦する層が増えている。

カメラとアートは切っても切れない関係にある。紀元前のはるか昔から、針穴を通して像を映す「ピンホールカメラ」という装置が広く知られていたようだ。旧石器時代の洞窟画はピンホールの原理を利用して描かれたという説もある。15世紀ごろに初期の原始的なピンホールカメラにさまざまな改良が加えられ、「カメラ・オブスクラ」が誕生。オランダの巨匠ヨハネス・フェルメールを筆頭に、画家たちの間で大流行した。当時は撮影技術もなくただ像が映し出されるだけの装置だったが、19世紀に入ると感光材料の発展による撮影が実現。その後、アスファルト、銀板・銅板、ガラス板、ゼラチンという変遷を経て、1899年には現在のフィルムにたどりついたという歴史がある。

このようにアナログな歴史をもつフィルムカメラが、デジタル・ネイティブ世代に人気を博しているという現象は、大いに興味深い。フィルムカメラは、エモい(*)写真が撮れるということで、鋭い感性をもつ若者たちの間で流行し始めているのだ。杉本博司や森村泰昌などアート写真家が次々と登場した1980年代以来久々に、「写真」という表現自体が脚光を浴びつつある。
(*ノスタルジックで心を揺さぶられるような感情。語源は「感情的な」を意味する英語の「emotional(エモーショナル)」。)

Lomo’Instant Automat Glass Ema Ichikawa Edition 画像2

そこで百兵衛では、再び盛り上がりを見せている「写真」という表現に注目し、日本各地の写真展をピックアップ。さらに、ロモグラフィー(ロモジャパン社)提供によるインスタントカメラ「Lomo’Instant Automat Glass Ema Ichikawa Edition」を2名様にプレゼント。応募はページ右上部の「プレゼント」ボタンから。

Lomo’Instant Automat Glass Ema Ichikawa Editionとは?
金箔やボールペンなどさまざまな素材をミックスさせ、海洋生物や植物をいきいきと描くアーティスト、市川江真とのコラボデザインのフィルムカメラ。直感的で使いやすい実験的な機能が搭載されており、暗い場所でもフラッシュで安心して撮影できる。

ぜひ、このインスタントカメラを片手に街へ出て、フィルムカメラの独特な表現を楽しんでほしい。そしてここからは、現在開催中あるいは近々開催される注目の写真展を紹介しよう。

 

蜷川実花展 with EiM:(はかな)くも(きら)めく境界 Where Humanity Meets Nature 

蜷川実花《Sanctuary of Blossoms》画像

蜷川実花《Sanctuary of Blossoms》2024年 本展会場風景 ©Lucky Star Co.,Ltd

AOMORI GOKAN アートフェス2024」のメイン企画のひとつ。日本を代表する写真家・映画監督である蜷川実花と、彼女が個人の活動と並行して制作を展開しているクリエイティブ・チーム「EiM」との協同による大規模な展覧会で、蜷川が弘前で撮影した桜をはじめとした日本各地の花々を捉えた写真・映像作品と、EiMとともに作り上げるインスタレーション作品が並ぶ。花を重要なモチーフとして継続的に撮り続けてきた彼女が特にかれるのは、原生林のような野に咲く花ではなく、人間の手によって育てられ、人間と共存する花々だ。過去の代表シリーズも展示され、近年の蜷川作品とのつながりを新たな時間軸で提示する展覧会となっている。また、展示のクライマックスでは、先述の弘前の桜が登場する。

会期:4月6日(土)〜9月1日(日)
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
休館日:火曜日(ただし、8月6日[火]は開館)
時間:9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1,500(1,400)円、大学生・専門学校生1,000(900)円、高校生以下無料
URLhttps://www.hirosaki-moca.jp/

植田正治と土門拳-巡りあう砂丘-

植田正治《土門拳と石津良介》画像

植田正治《土門拳と石津良介》1949年 一般財団法人 日本カメラ財団 所蔵

20世紀の日本を代表する写真家、植田正治(1913〜2000)と土門拳(1909〜1990)。対照的な個性を持った作家としてしばしば比較されてきた彼らだが、戦後まもなく写真雑誌の企画で鳥取砂丘において合同撮影会をおこない、お互いの姿をレンズに収めるなど、それぞれの長いキャリアの中でしばしば接点を持っていた。彼らが多数の文章などに刻んだ写真の美学からは、相違点のみならずさまざまな共通点もうかがえ、強烈な才能をもった2人のアーティストが戦後写真史を発展させてきた軌跡を感じられる。
植田の故郷・鳥取と土門の故郷・山形はともに「裏日本」と呼ばれる、広大な砂丘地帯を擁する日本海に面した地域だ。タイトルにもある植田作品の代名詞「砂丘」は、両者の写真家人生が時に同じ場所で交差するものであったことも示している。

会期:4月5日(金)〜7月15日(月・祝)
会場:土門拳記念館
住所:山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
観覧料:一般1,200円、高校生600円、中学生以下無料
URLhttp://www.domonken-kinenkan.jp/

TOPコレクション時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方向から

黒岩保美《D51 488 山手貨物線(恵比寿)》画像

黒岩保美《D51 488 山手貨物線(恵比寿)》1953年 ゼラチン・シルバー・プリント  東京都写真美術館蔵

「時間旅行」をテーマとする東京都写真美術館のコレクション展。人がさまざまな時代を自由に旅する「時間旅行」という発想は昔からよく知られたSF的なファンタジーだが、想像の世界や芸術の領域では、人は誰でも時間と空間の常識を飛び越えることが可能なのではないだろうか。本展では、100年前である1924年を出発点として、「1924年–大正13年」「昭和モダン街」「かつて、ここで」「20世紀の旅」「時空の旅」の5つのセクションに分け、(*)37,000点を超える東京都写真美術館収蔵の写真・映像作品、資料を中心に紹介する。「時間旅行」をテーマとする本展で鑑賞者は、それぞれの時代、それぞれの場所で紡ぎ出される物語と出会うことができるだろう。
(*)2024年3月末時点

会期:4月4日(木)〜7月7日(日)
会場:東京都写真美術館 3階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
休館日:月曜日
時間:10:00~18:00(木・金曜日は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
観覧料:一般 700(560)円、学生 560(440)円、中高生・65歳以上 350(280)円
※( )は有料入場者20名以上の団体、同館映画鑑賞券の提示者、各種カード会員割引料金
URLhttps://topmuseum.jp/

広川泰士作品展「sonomama sonomama」

《養鶏業者 香川県 1986画像

《養鶏業者 香川県 1986》
ファッション:O.D.O.ブルジョアジー

独学でキャリアを重ね、ファッション、広告、CM、映画の撮影監督など幅広く活躍を続けてきた広川泰士。一方、個人の作品制作では、日本全国にある原子力発電所を捉えた「STILL CRAZY」、巨岩と星の軌跡を捉えた「TIMESCAPES─無限旋律─」、現代日本における自然と人間の営為を捉えた「BABEL」など、時間や環境と人間の存在を問うスケール感のある作品を発表してきた。「sonomama sonomama」シリーズは、『アサヒカメラ』(1982年6月号)に掲載された「あなたもわたしもこのぼくも」をきっかけに5年をかけて撮影されたもの。畑ですきを振る農夫や漁師、船の解体作業員、村の時計屋さん、アイスクリーム売り、お寺の住職など、出会った人々に声をかけ、その場でデザイナーズ・ファッションを身にまとってもらい捉えたポートレートは、地域に根付き生活する人々と衣服、そして風景が一体となっている。自然と暮らす純粋な人間とデザイナーズ・ファッションとの化学反応を楽しんでほしい。

会期:6月4日(火)〜7月7日(日)
会場:JCIIフォトサロン
住所:東京都千代田区一番町25 JCIIビル
休館日:月曜日(祝・祭日の場合は開館)
時間:10:00〜17:00
入館料:無料
URLhttps://www.jcii-cameramuseum.jp/

GOTO AKI 写真展「TERRA 2024 -身体と空間-」

GOTO AKI 画像

日本の自然風景を惑星・地球の胎動として捉えた「terra」(キヤノンギャラリー S 2019[品川]、他)の延長線上にある写真展。撮影を継続する中で、GOTO AKIの関心は、海中の山、湖の水中に点在する木々、地中からの湧水など、名もなき動体としての風景へと向かった。変容する自然をあるがままに受け入れ、身体をセンサーとして感じる何かを縁として自然風景にレンズを向けると、抽象画のように全体と部分が反転し続けるようなイメージを見出すことがある。我々を囲む自然風景を別の角度から照らし出し、写真的な視覚体験の広がりを提示する、GOTO AKIの個展をお見逃しなく。

会期:7月30日(金)〜8月10日(日)
会場:キヤノンギャラリー大阪
住所:大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F
時間:10:00〜18:00
休館日:日曜日、月曜日、祝日
URL https://personal.canon.jp/showroom/gallery/osaka/

トークイベント
日時:2024年8月3日(土)16時00分~17時00分
場所:キヤノンギャラリー大阪
費用:無料
申し込み:事前申し込み不要

 

ロモグラフィーとは?
アナログ写真に情熱を燃やす世界規模のコミュニティー。ビビッドでユニーク、そして時には手ブレ全開のクレイジーな写真でさえ楽しむ──そんな常識にとらわれない精神でたくさんの実験的なカメラやフィルム、レンズ、アクセサリーを生み出し、世界中の何百万人もの愛好者(=ロモグラファー)とともに写真の楽しさを広めようと考えている。公式モットーは「“Don’t Think, Just Shoot”(考えるな、とにかく撮れ!)」。
外部リンク:公式HP / Instagram / X(旧Twitter) / Youtube

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