悠久の時を超えて輝く日本刀。日本刀が誕生した平安時代より、それぞれの時代を代表する名匠が現れ、各時代を象徴するかのような名刀を世に残した。平安時代の備前を代表する正恒、後鳥羽院の御番鍛冶を務めた粟田口国安、鎌倉幕府のお膝元で鍛刀した相州正宗、新刀の祖・堀川国広。彼らが打った刀剣は、大切に現代へと受け継がれている。
日本刀は武器でありながら、日本文化を表徴する美術品。摩訶不思議な由緒や、持ち主の名前をおりまぜた独自の呼称を持ち、その名が文化的背景を物語ることも少なくない。
本展では、長篠の戦いでの功を賞し織田信長が奥平信昌に下賜した「長篠一文字」、疱瘡快癒の祝儀として徳川将軍家に代々伝わった「疱瘡正宗」、トンボが先に触れて真二つになったという逸話が残る本多忠勝の名槍「蜻蛉切」など、興味深い号をもつ刀剣が揃う。
「名物 松井江」の刀と拵は、本展で四半世紀ぶりに再会することとなる。この朱漆塗りの打刀拵は、「松井江」の名の由来である肥後国八代城主松井家で大切に保管されてきたものだ。
また、修復が完了したことを記念し、高野山伝来の重要文化財『沈金獅子牡丹文長覆輪太刀拵』も展示される。漆工の技法「沈金」で装飾された太刀拵は珍しく、しかもこの作品は、最初期の作例のひとつである。
良質な鋼と鍛錬による澄んだ地鉄、刀工の個性が光る刃文など、日本刀の美しさは観る者を魅了してやまない。百花の如くそれぞれの魅力を放つ名刀を堪能しよう。
[information]
佐野美術館創立55周年・三島市制80周年記念 名刀百花
・会場 佐野美術館
・会期 2022年1月8日(土)〜2月13日(日)
・住所 静岡県三島市中田町1-43
・電話 055-975-7278
・時間 10:00~17:00(入館受付は16:30まで)
・休館日 木曜日
・観覧料 一般・大学生1,100円、小・中・高校生550円
※毎週土曜日は小中学生無料
・URL https://www.sanobi.or.jp/