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「サロン・ド・アール・ジャポネ」グランプリ受賞作家・田口恵子インタビュー

田口恵子《C'est la vie》

《C'est la vie》 油彩/キャンバス 53.0×45.5cm サロン・ド・アール・ジャポネ グランプリ受賞作品

 

画家・田口恵子。彼女が油彩で描く薔薇をはじめとする花々は、美しいグラデーションによる陰影が印象的だ。その作品は、世界最古の公募展であるフランスの『ル・サロン』でも高く評価され、2019年に初挑戦にして入選、2020年には佳作を受賞している。そして昨年11月、田口は同じくフランスで開催されたパリ美術界への登竜門的存在の展覧会『サロン・ド・アール・ジャポネ』で見事グランプリに輝いた。
今回「美術屋・百兵衛ONLINE」では、そんな田口にグランプリ受賞の心境や、画業の原点などについて話を聞いた。


──絵はいつ頃から描き始められたのでしょうか?
28年くらい前でしょうか。家を飾りたいなと思いアンティークの絵を買いにいったのです。とても素敵な、一対の薔薇と葡萄の絵があって、悩んだ末に薔薇の絵の方を購入しました。けれどもどうしても葡萄の絵も忘れられなくて、後日購入しにお店に訪れたのですが、すでに売れてしまっていました。その時に「無いのなら自分で描いてみようかな」と思ったのがきっかけです。当時はインテリアとしての絵に興味があったので、まずはオイルペイントで基礎を学び、技術を身につけました。次にアメリカのペインティング試験を目指すクラスに入り、難関といわれる試験でしたが、無事に「Master Decorative Artist(MDA)」のフローラル部門に合格することができました。

──オイルペイントから油彩画に移られたきっかけをお聞かせください。
教室を運営しているので、オイルペイントはトールペイントと組み合わせ、デコラティブペイントとして今も続けています。油彩画を始めたのは、もともと油彩画を描きたかったからですが、パリの展覧会で見た、50号のキャンバスに描かれた作品が額装されている姿に惹かれて、私も描きたい! という衝動に駆られたのがきっかけです。

──板とキャンバスはどこが違うと感じられましたか?
キャンバスは色を重ねるだけ深みがでます。制作途中で納得できなくて描き直すこともあるのですが、それも作品の一部として馴染みます。そういったところが面白いなと感じます。

田口恵子《Chaleur》

《Chaleur》 油彩/キャンバス 72.7×90.9cm ル・サロン2019入選


──田口さんの作品はグラデーションが美しく、オイルペイントも描く画家ならではだと感じます。
そうですね、オイルペイントで身につけた技術は油彩画でも使用しています。それこそグラデーションはオイルペイントの技法である“サイドローディング”で描いています。油彩画にはない表現かもしれません。

──薔薇をモティーフにした作品を多く描かれていますが、それはなぜでしょうか。
もともと薔薇を描きたくて絵を始めたところもあるので、薔薇は私にとって特別なモティーフなのです。周りの方にも薔薇は画家・田口恵子のモティーフだと思われています。
風景も好きで描きますが、オイルペイントの教室で生徒さんに教える材料となることがほとんどです。オイルペイントの教室で生徒さんの作品をお手伝いするので、そこで“描いた気分”になってしまうのかもしれません。

リンダ・ファレル・ギャルリーでの展示風景

リンダ・ファレル・ギャルリーでの展示風景


──今回の受賞作は薔薇とともにワインが描かれていますね。
絵を描くきっかけになったのが、先ほどお話しした薔薇の絵と葡萄の絵だったので、もともと薔薇と葡萄を一緒に描くことがありました。ワインの原料は葡萄ですから。ワイン用の葡萄畑にはよく薔薇が植えられていますし、薔薇と葡萄はパートナーのようなものだと思っています。

田口恵子《Pluie Bleue》

《Pluie Bleue》 油彩/キャンバス 90.9×72.7cm ル・サロン2020佳作


──田口さんは世界最古の公募展である、フランスのル・サロンに2度入選されています。挑戦されたきっかけをお聞かせください。
私は絵をオイルペイントから始めて、学校で油彩画を学んだこともありません。なので、自分の作品が絵としてどれだけ認めてもらえるか知りたかったのです。芸術が盛んなフランスでプロの目で見て欲しかった。日本国内ではわからないことがきっとあると思いました。ですので入選した時は「認められた」と感じ、本当に嬉しかったです。

2021年度のル・サロンで展示された《Pluie Bleue》


──今回のサロン・ド・アール・ジャポネもフランスのパリの展覧会ですが、田口さんにとってパリとはどういう場所なのでしょうか。
パリが好きなのです。歩いているだけで楽しい街ですよね。日本とは違い、いつ訪れても街並みが変わらず、不思議と「帰ってきたなあ」という気持ちになります。少し懐かしい気持ちというか。あとは、パリの空が好きです。建物が低いので空が広く感じられ、そこにぽっかり浮かぶ雲も、とても好きです。

田口恵子《Cascade rose》

《Cascade rose》 油彩、金箔/キャンバス 60.6×50.0cm


──グランプリを受賞された、率直なお気持ちをお聞かせください。
グランプリは一つの目標だったので、それを達成することができました。興味を持ってもらえて、良い作品だと思ってもらえたのはとても嬉しかったです。認めてもらうことは自信につながります。絵を趣味ではなく仕事として続けていきたいので、今後も真摯に取り組んでいきたいと思います。

──最後に今後の展望についてお聞かせください。
個展がしたいなと思っています。個展は個展でも、自分が企画するのではなく、誰かに企画してもらい開催するのが目標です。私の絵が好きな人、好みに合う人に出会いたいと思います。

[Profile]

田口 恵子(タグチ ケイコ)
1964年 神奈川県出身
2019年 第24回オアシスターレンス賞
2019年 ル・サロン入選
2020年 ル・サロン佳作受賞
2020年 日本の美術人気アーティスト賞

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