上村松園と並ぶ美人画の描き手として定評のある鏑木清方。その没後50年という節目にあたる今年、東京国立近代美術館では清方の大規模な回顧展が開催中だ。今回の展覧会は清方の日本画作品のみで構成され、初公開作品10点を含む約110点の作品が一堂に会す。
清方は浮世絵系の挿絵で人気を博した後、日本画家に転身し、美人画によって画壇での地位を確立した。しかし美しい女性だけを描きたかったのではない。その人物が纏う空気や、周囲の抒情などといった部分までをも表現した清方は、人間の生活やそれら全てを内包する街の営みなどに強く惹かれていたようだ。そんな彼は〈自分の興味を置くところは生活にある。それも中層以下の階級の生活に最も惹かるる〉(「そぞろごと」1935年『鏑木清方文集 一』)という言葉を残している。
人々の暮らしに興味を抱き続けた清方だが、過ぎ去った時間に想いを馳せていた一面もある。自身の生まれた明治時代を追慕するかのように、人物の立ち姿やその表情を描いた。
清方の魅力は挿絵や美人画だけではない。
ぜひこの機会に、清方が鮮やかに描いた物語を堪能してはいかがだろうか。
なおこの展覧会は東京展の後、京都国立近代美術館へ巡回する。会期は5月27日(金)〜7月10日(日)。
[information]
没後50年 鏑木清方展
・会期 2022年3月18日(金)~5月8日(日)
・会場 東京国立近代美術館
・住所 東京都千代田区北の丸公園3-1
・電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・時間 9:30~17:00、金曜・土曜は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
・休館日 月曜日(5月2日は開館)
・観覧料 一般1,800円、大学生1,200円、高校生700円
・URL https://kiyokata2022.jp