八幡はるみ《GARDEN 初夏》2008-23年
美しく咲き誇る花々、まばゆい光に包まれた溢れんばかりの緑、色鮮やかな植物たちで埋め尽くされる大画面──。染色作家・八幡はるみが創造するかぐわしい世界を堪能することができる展覧会が、ヤマザキマザック美術館では開催中だ。
八幡が染色の枠に収まらない規格破りのアーティストとして知られるようになったのは、1990年代の初頭。それは、楮紙をベースに型や版の技法を用いて、青海波などの古典文様を四曲一双屏風にダイナミックに展開した「水のシリーズ」等の発表によるものだった。
その後は、ろうけつ染めや金銀箔をコラージュするなど、伝統的な技を活かしながら、量産にも耐え得るスクリーン・プリントを導入。時代にあった色彩感覚を取り込みつつ、従来の染色が持っていた世界観を次々と解放していく。これらの時期は、本展の第一章で見渡すことができる。
八幡はるみ《Shangrila》2009年
第二章で紹介されるのは、「シェイプド・ダイ」の世界。シェイプド・ダイとは八幡が考案した絞り染め技法で、折ったり曲げたりあるいはシワを寄せたりしてできた布の凹凸に、注射器や霧吹きなどで染料を染み込ませ、その色の濃淡を活かして表現するもの。この技法で、より即興的かつ感覚的に、そしてより色彩豊かに花開いていくことになった、彼女の2000年代の作品が会する。
コンピューターによる画像加工やインクジェットプリントにも取り組んだ近年の作品を鑑賞できるのは第三章。デジタル技術を取り入れた八幡の挑戦は、今なお、染色表現の地平を拡げ続けている。
八幡はるみ《Flower bed 2023 version》2023年
色彩を開放し、技術革新に挑み、新たな染色の魅力を発信し続ける八幡はるみ。彼女の1990年代の創成期から2023年の最新作までの軌跡を辿り、その世界を心ゆくまで味わってほしい。
関連イベント
同館学芸員によるガイドツアー
・日時 会期中の第2・4土曜日（6月10日、6月24日、7月8日、7月22日、8月12日、8月26日）、10:30～11:30
・参加無料 ※ただし要当日鑑賞券/ 予約不要/ 定員15名(先着順)
・定員15名（先着順）
・予約不要
※最新情報は同館ホームページの「お知らせ」欄でご確認ください。
会場風景
会場風景
八幡はるみ Harumi Yahata
1956年 大阪に生まれる
1980年 京都市立芸術大学卒業
1982年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
[主な個展]
2008年 高島屋東京日本橋店 画廊Ｘ／東京
2011年 「八幡はるみ個展」イムラアートギャラリー／京都
2013年 「八幡はるみ工芸・東洋館を祝う」大原美術館工芸館・東洋館／岡山
2018年 「―About Textile―」ギャラリーサラ／滋賀
2022年 「八幡はるみ個展―宇宙を言祝ぐ―」染・清流館／京都
2023年 「八幡はるみ GARDEN」ヤマザキマザック美術館／愛知
[主なグループ展]
1991年 「芸術祭典―京―、新古典空間学」岩城邸／京都
1994年 「現代の染め」国立国際美術館／大阪
1995年 「第1回美の予感」高島屋／京都、大阪、東京、横浜
1996年 「日本の染織テキスタイル」目黒区美術館／東京
1997年 「京都芸術新人賞 受賞作家展」京都四条ギャラリー／京都
「シガ・アニュアル」滋賀県立近代美術館／滋賀
「国立国際美術館の20年」国立国際美術館／大阪
1999年 「京友禅 きのう・きょう・あした」目黒区美術館／東京
2001年 「現代の布」東京国立近代美術館／東京
2002年 「現代の工芸―素材と造形思考」ペトロナスギャラリー／マレーシア
2007年 「〈素材×技術〉からフォルムへ」茨城県つくば美術館／茨城
2008年 「『装飾』所蔵作品展」東京国立近代美術館工芸館／東京
2010年 「近代染色の展開と現在」茨城県つくば美術館／茨城
2013年 「Contemporary KOGEI Styles in Japan」森上博物館／アメリカ
～文化庁・外務省主催：現代の日本工芸展に招待出品
2015年 「琳派400年記念」京都文化博物館／京都、日本橋高島屋／東京
2016年 「革新の工芸―“伝統と前衛”そして現代」東京国立近代美術館／東京
2019年 「京都の染織」京都国立近代美術館／京都
2020年 「京都美術文化賞受賞記念展」京都府京都文化博物館／京都
2021年 「Colors」京都芸術大学ギャルリ・オーブ／京都
[information]
八幡はるみ GARDEN
・会期 2023年4月21日（金）〜8月27日（日）
・会場 ヤマザキマザック美術館
・住所 愛知県名古屋市東区葵1-19-30
・時間 平日 10:00～17:30／土・日・祝日 10:00〜17:00（入館は閉館の30分前まで）
・休館日 月曜日（※7月17日、8月14日は開館）、7月18日
・入館料 一般1,300円、小・中・高生500円、小学生未満無料
※音声ガイド無料サービス
・TEL 052-937-3737
・URL https://www.mazak-art.com