国内外から多くの人が訪れる国際観光都市、京都。この地で創出された社寺建築や美術工芸などの歴史遺産をはじめ、茶道や華道、能、狂言、舞踊などの伝統文化は人々を惹きつけてきた。
平安時代後期に中国からその原型がもたらされた茶の湯は、鎌倉時代、南北朝時代、室町時代と時代が進むなかで徐々に和様化し、今では日本文化を象徴するものとして世界で認知されている。現在も茶道の家元や茶家の多くが本拠としている京都は、そうした茶の湯の歴史のなかで中心的な役割を果たしてきた。
この展覧会では、京都にゆかりのある各時代の名品を通して茶の湯文化を堪能することができるだろう。
この展覧会の見どころ
茶の湯の名品が集結!
◎宋の皇帝・徽宗筆と伝わる宮廷絵画の傑作、国宝『桃鳩図』を11月3日~6日の4日間、期間限定で公開
◎茶の湯の茶碗の最高位とも呼ばれる、国宝『大井戸茶碗 銘喜左衛門』を展示
◎喜左衛門と並び称され、秀吉が愛用したとされる重要文化財『大井戸茶碗 銘筒井筒』が数十年ぶりに関西で公開
◎約400年にわたり禅の心をもって守り伝えられてきた名碗。世界に三碗現存するうち、京都・龍光院所蔵の国宝『曜変天目』を10月8日~23日に公開
時代ごとの喫茶の場を体感
◎建仁寺方丈での四頭茶礼の様子を名品で再現
◎室町時代、茶会の場で賞玩されていた唐物の名品を設えた場を体感
◎秀吉の黄金の茶室、利休のわびの茶室を再現
章構成について
──序章 茶の湯へのいざない
日本独自の茶の湯文化がどのように花開いたのか、国宝の『法語(破れ虚堂)』や『大井戸茶碗 銘喜左衛門』のほか、『唐物文琳茶入 酸漿文琳』といった伝世の名品でその変遷を辿る。
──第1章 喫茶文化との出会い
茶の湯文化が起こる以前の“茶”は、どうのようにして日本に渡来したのだろうか。公事根源の記録によると奈良時代である729(天平元)年、聖武天皇の時代に「宮中に僧を召して茶を賜った」と記されている。その後、平安時代後期には、現在の茶の湯に繋がる中国・宋代の点茶法(粉末の茶を入れた容器に湯を注ぐ方法)による飲茶が日本でも始まった。第1章では、喫茶文化が大きな変化を遂げる様子と、その広がりを見ることができる。
──第2章 唐物賞玩と会所の茶
禅宗の僧・栄西が、南宋での修行から帰国した1191年、臨済宗とともに当時宋の禅宗寺院で流行していた抹茶を日本に伝えた。禅宗寺院における規範としての茶が続けられる一方、武家の会所では唐物を賞玩するなかで茶を楽しむ文化が生まれる。また、茶の栽培の広がりにともない、社寺の門前の茶屋など、一般にも広く茶が楽しまれるようになった。その様子が第2章で、『唐物肩衝茶入 銘残月』などの名品とともに紹介される。
──第3章 わび茶の誕生と町衆文化
貴族や武家など主に上流階級の間で唐物道具がもてはやされるなかで、日々の暮らしのなかにある道具を用いた、わびの精神を取り入れた茶が生み出される。わび茶が生み出された過程が、多くの町衆の経済活動に支えられていたことがこの章でわかるだろう。
──第4章 わび茶の発展と天下人
名物と言われる由緒ある茶道具の優品には資産的な価値があり、こぞってこれを収集していた武将たち。千利休がめざしたわび茶は、信長・秀吉をはじめとした天下人をも魅了し、武士たちにも認められた。それが、茶の湯が日本全国に拡がりながら、独自の発展を遂げ、大きくかたちづくられていくことにつながっていく。
──第5章 茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人
利休や秀吉が活躍したのち、武家、公家、僧侶、町人とそれぞれの立場において茶の湯が拡がった。第5章では、立場によって異なるそれぞれの茶の湯の形成過程や独自の茶道具などに焦点を当て、国宝『志野茶碗 銘卯花墻』や重要文化財『色絵若松図茶壺』などを展観する。
──第6章 多様化する喫茶文化 煎茶と製茶
中国と交流するなかで、煎茶などの新たな中国文化が日本に持ち込まれた江戸時代。中期頃には、京都府南部の宇治地域における製茶技術の向上により、より良質な茶が作られるようになる。しつらえの美しさや道具の由緒・趣などを尊ぶだけでなく、茶そのものの味も追求され、楽しまれるようになった。
──第7章 近代の茶の湯 数寄者の茶と教育
近代になり、文明開化の名のもとに日本の伝統文化は大きな影響を受けた。茶の湯も例外ではなく、多くの茶道具が海外に流出。そのような時代にあって、近代の数寄者たちの間では茶の湯が流行し、京都では学校教育にも茶の湯が導入された。
今なお茶の湯が生きる、千年のみやこ・京都。連綿と守り継がれた歴史と、茶人たちの美意識の粋を感じてほしい。
[information]
紡ぐプロジェクト 読売新聞大阪発刊70周年
特別展「京に生きる文化 茶の湯」
・会期 2022年10月8日(土)〜12月4日(日)
前期展示:10月8日(土)~11月6日(日)
後期展示:11月8日(火)~12月4日(日)
・会場 京都国立博物館 平成知新館
・住所 京都市東山区茶屋町527
・時間 9:00~17:30(金・土曜日は20:00まで開館)※入館は閉館の30分前まで
・休館日 月曜日(ただし、10月10日[月・祝]は開館、翌11日[火]は休館)
・観覧料 一般1,800円、大学生1,200円、高校生700円
※中学生以下、障害者手帳等提示で本人と介護者1名は無料
※大学生・高校生は学生証提示の必要あり
※キャンパスメンバーズ(教職員を含む)は学生証または教職員証提示により、各種当日料金より500円引(当日南門チケット売場のみの販売)
※展示室内の混雑時は、入場制限をおこなう場合あり
※新型コロナウイルス感染状況などを踏まえ、展覧会の会期・開館時間などが変更となる場合あり。来館の際は美術館公式サイトで最新情報を要確認
・TEL 075-525-2473(テレホンサービス)
・URL https://tsumugu.yomiuri.co.jp/chanoyu2022/