京都の夏の風物詩、祇園祭の宵山に
旧家・老舗が秘蔵の作品を公開する
伝統的な「屏風祭」。
7月の一ヶ月間にわたって多彩な祭事が行われる八坂神社の祭礼、祇園祭。千年以上の歴史を持つこの京都の夏の風物詩は、京都三大祭りはもちろん、日本三大祭りのひとつにも数えられる。しかし2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、一昨年、昨年と山鉾巡行、宵山が中止となった。これは第二次世界大戦時以来の異例な出来事である。
残念ながら今も感染拡大の収束には至っていない。しかし、貴重な文化遺産を将来へと継承していくことも必要だ。そこで2022年の祇園祭は感染対策を徹底しながら、本来の祭礼の形をできる限り実現することに決まった。過去2年間は中止となった鉾巡行、宵山も実施される。
屏風祭は、祇園祭の宵山期間に京都の旧家・商家がこぞって秘蔵のお宝を公開して祭りを盛り上げる習わしであり、江戸中期に始まったとされる。明治末から大正・昭和初期にかけて屏風祭は最盛期を迎え、前祭と後祭をあわせ300軒近くの家々でおこなわれていたようだ。しかし、第二次世界大戦山鉾巡行の中止とともに屏風祭も取り止められ、戦後に復活したものの、その数は減少した。
京都烏丸三条にある千總ギャラリー〈ギャラリー1〉では現在、屏風祭にちなんだ展覧会「千總の屏風祭―明治の屏風祭ふたたび」が開催されている。
120年前の屏風祭の作品が
長い年月を経て今また展示される。
室町時代後期に法衣装束商として創業した千總は、京友禅の老舗として知られている。美術工芸品や歴史資料など所蔵する約20,000点を広く公開する目的で、1989(平成元)年、本社新社屋の竣工時に千總ギャラリーを開設した。
このギャラリーでは、過去にもこの時期に屏風をはじめとする所蔵品を展示し、祇園祭に賑わいを加えてきた。今年の展示ではちょうど120年前に千總が屏風祭で公開した作品が紹介される。
1902(明治35)年、『京都日出新聞』(京都新聞の前身)が7月24日に「御屏風拝見」として各家でどのような作品が陳列されたかを報じており、そこから岸竹堂《牛馬図》や山口素絢《やすらい祭図》など当時千總が展示した屏風5点が判明した。
家の中に秘蔵の作品を並べる町衆、町屋の格子越しに外から眺めて目を養う見物客、双方が高め合うようにして育んできた京都の美の文化を、ぜひこの機会に堪能してほしい。
なお、宵山期間の7月15日(金)・16日(土)は開館時間を延長し、夜間公開がおこなわれる。
伊庭靖子個展「外に内に染む」を同時開催
〈ギャラリー2〉では、9月5日(月)まで伊庭靖子個展「外に内に染む」を開催中。モチーフの光や空気を描くことで、そこにある質感を表現する伊庭。作家・原田マハの推薦により企画されたこの展覧会では、新作を中心に2点の風景画をはじめ、屋内のモチーフを描いた作品などが展示される。
[information]
千總の屏風祭―明治の屏風祭ふたたび
・会期 2022年5月28日(土)~ 8月22日(月)
・会場 千總ギャラリー〈ギャラリー1〉
・住所 京都市中京区三条通烏丸西入御倉町80 千總本店2階
・時間 11:00〜18:00(千總本店の営業時間に準ずる)
※7月15日(金)・16日(土)は20:00まで開館
※展示替え・臨時休業等により開館時間が変更となる場合あり
・定休日 火曜、水曜
・入場料 無料
・TEL 075-253-1555
・URL https://www.chiso.co.jp/honten/gallery/
●千總ギャラリーについてのより詳細な情報をお知りになりたい方は、以下のページの記事もご覧ください。
https://www.hyakube.com/magazine/art-gallery-visits-vol1/