戦後美術の盛んだった大阪を舞台に、
新たなアートフェアが生まれた。
戦後の大阪では、1946年に大阪市立美術館の専門教育機関である美術研究所(美研)が誕生し、白髪一雄など世界的なアーティストを数多く輩出。関西の若手前衛芸術家が吉原治良のもとに集った「具体美術協会」(1954年)のほか、「行動美術協会」(1945年)、「パンリアル美術協会」(1949年)などの美術団体が盛んに結成され、現代アーティストが目覚ましい活躍を見せる。1962年には、吉原の所有する土蔵を改装した私立美術館「グタイピナコテカ」が中之島に開設した。
そんな歴史を持つ大阪市の中心部にある、堂島リバーフォーラムで、2022年6月3日(金)~6月5日(日)の3日間にわたっておこなわれた「art stage OSAKA 2022」。国内最大級のアート見本市「アートフェア東京」の姉妹イベントであるこのフェアは、当初の計画では2021年の6月に予定されていたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、今年が待望の初開催となった。
同フェアは美術ファンや関係者のみならず、各国大使、行政関係者、経済界の人々が訪れる国際的なアートマーケットのプラットフォームを目指して活動を展開。「アートを鑑賞する」から「アートを保有する」という新しいライフスタイルに加え、アートを通じて人々の心と暮らしをより豊かにするための「新しい時代のアートとの向き合い方」を提案する。
一般社団法人アート東京・代表理事の來住尚彦は2022年の開催にあたり「2025年開催の大阪万博に向けて、日本の芸術・アートを世界中の人に観てほしい。大阪には今年で20年目を迎えるアートフェアART OSAKAがあるが、協力して大阪を盛り上げていくことが目的です」と述べ、今後の開催にも高い意欲を示した。
出展28ギャラリーとSpecial Exhibition
「art stage OSAKA 2022」では、アートフェア東京の約6分の1の広さの会場に、現代アートのコレクションブームを牽引している28軒のギャラリーと、Special Exhibitionとして大阪芸術大学が出展。若手から巨匠まで、様々な価格帯の現代アートが来場者を迎えた。
次から、実際に会場を訪れた際に気になったギャラリーを紹介しよう。
── gallery UG
東京から参加した「gallery UG」は作家3名をピックアップし、それぞれを独立した空間で展示。同ギャラリーはアーティストの制作サポートや若手アーティストの育成に注力しており、取締役の今井友美氏によると、最も広いスペースを使った野原邦彦は、15年かけてプロデュースし続けているという。彼は一木造りの木彫だけでなく、FRPやブロンズの立体作品や、ドローイングにも多彩な才能を発揮している。野原作品の向かいに展示された田島享央己と岡田菜美も、いま注目を集めている作家だ。
gallery UG
■HP https://gallery-ug.com/
── DMOARTS
このフェアの運営にも関わっているDMOARTSは、大阪でラジオ放送事業を営む株式会社FM802 / FM COCOLOのアートプロジェクト「digmeout」がプロデュースするギャラリー。プロデューサーの高橋亮氏は、これまで「UNKNOWN ASIA」「DELTA」など新たなフェアを立ち上げるなど、大阪のアートシーンの発展と拡大に注力してきた。若手作家の発掘や育成に積極的な同ギャラリーは「ART FAIR TOKYO」「ART OSAKA」にも出展している。
art stage OSAKAでの展示業務を担うディレクターの黒田純平氏は、関西と関東からそれぞれ3名の若手作家をセレクトした。倉敷安耶、七海、長谷川由貴、野田ジャスミン、hin、薬師川千晴は、いずれもマーケットシーンでの露出は少ないながらも、今後さらなる評価が期待される作家だ。今後の展望について黒田氏は「関西にも良い作家は多いので、その存在を知ってもらいたい。関西のアートシーンや、アートを発信する機会を作っていけるのは意義のあることだと思うし、DMOARTSもそれをお手伝いできればと思っています」と話した。
DMOARTS
■HP https://dmoarts.com/
「art stage OSAKA 2022」の公式ウェブサイトでは「Artworks」ページで出展作の一部が紹介され、「VR」ページでは会場を歩き回るようにフェアが疑似体験できる。こちらは会期終了後も見ることができるので、気になる方はぜひチェックしてほしい。
また、このアートフェアの会期中には、堂島・中之島のアートスポットをめぐるエリア回遊型フェス「ART WALK 堂島/中之島」も同時開催された。エリア内に点在する美術館、アートスポット、店舗、歴史的建造物など約20のスポットが掲載された「ART TABLOID 堂島/中之島」は、アートな街巡りを楽しめる大判サイズのメディア。緑が鮮やかな初夏の川沿いは、このタブロイドを片手に散策するアートファンで賑わった。2025年の万博開催に向けて、アート振興の機運が高まりつつある大阪。人々の日常に、アートがより一層浸透する未来が待ち遠しい。
[information]
art stage OSAKA 2022
※このイベントはすでに終了しています。
・会期 2022年6月3日(金)〜6月5日(日)
・会場 堂島リバーフォーラム(大阪市福島区福島1丁目1-17)
・出展ギャラリー YOD Gallery、Shun Art Gallery、ボヘミアンズ・ギルド、サテライツ・アート・ラボ、JK GALLERY(JUNKO KOSHINO)、GALLERY TOMO、GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE、TAKU SOMETANI GALLERY、TOMOHIKO YOSHINO GALLERY、鳩ノ森美術、MU GALLERY、GALLERY KOGURE、MARGIN、アート・コレクション中野、ギャラリーセラー、Takuro Someya Contemporary Art、MAKI Gallery、GALLERY TARGET、たけだ美術、gallery UG、YUKIKOMIZUTANI、Galleria COL、CONTEMPORARY TOKYO、STANDING PINE & Maki Fine Arts、Gallery NAO MASAKI、Sho+1、KOSAKU KANECHIKA、DMOARTS
・Special Exhibition 大阪芸術大学
・主催 art stage OSAKA 実行委員会
・特別協賛 東京建物 Brillia / Hotel Properties Limited
・協賛Sponsor 大阪芸術大学
・協賛Partner 株式会社 大丸松坂屋百貨店、京阪ホールディングス株式会社
・URL https://artstageosaka.com/