会場:青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館 ※この他県内各地での連携企画を実施 |
会期:4/13(土)~9/1(日) |
青森県内にある五つの美術館・アートセンター(青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)を舞台に、「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」と題したイベントが4月13日(土)から9月1日(日)までの日程で開催される。
初開催となるこのアートフェスは、2020年から5館の連携によって県民や観光客に青森のアートを体験してもらいながら、地域の周遊を喚起するという「5館が五感を刺激する―AOMORI GOKAN」の成果のひとつ。今年は「つらなりのはらっぱ」という共通テーマのもとに、5館の学芸員が中心となって各館の特徴を生かした展覧会、また各館を巡回する共通企画を実施することになった。また、アート体験を軸に、周辺のショップや施設にも足を運んでもらうなど地域の周遊促進にも力を入れており、観光客のみならず、青森県内や周辺の人々も楽しめるフェスを目指している。
5館の[共通企画]として栗林隆の《元気炉》が各館を巡回するほか、5館共通のラーニング・プログラムを実施。未来に向けて、子どもたちがもっと身近にアートに触れることで、関心を持ってもらえるようにすることを目的に、親子が美術館を積極的に楽しめる環境や学びの場となるような鑑賞ツールの開発やプログラムの展開に連携して取り組む。さらに参加作家によるトークや体験型のイベント、音楽企画、リサーチをもとに作家が考案したコース料理を作品として発表するなど、各館が独自の企画力で場所、展示作品に関連したイベントをおこなう予定だ。
2024年度のテーマ「つらなりのはらっぱ」
「はらっぱ」と聞いて思い浮かべる風景が人それぞれ違うように、青森には「はらっぱ」にたとえられる、個性豊かな五つの現代美術を扱う館がそろっている。
「はらっぱ」は目的をもって行くところではなく、訪れることで何かに出会い、何かが起こる、特別だけれど日常とも地続きの場所。そこは、訪れては去っていく人間、動物、植物などの訪問者たちが関係する境界上に位置し、日々思い思いの活動が繰り広げられる場ともいえるだろう。
2024年度のテーマ「つらなりのはらっぱ」には、五つの美術館やアートセンターがまさに「はらっぱ」のように機能し、それぞれの個性的な活動のつらなりから新たな関係性が紡がれていくようにとの思いが込められている。5館はそれぞれの「つらなりのはらっぱ」を通して、これまでにない風景がいま、ここに立ち上がることを目指しているのだ。
AOMORI GOKAN アートフェス 2024の特徴
■新しい文化芸術ネットワークの在り方を探る
このアートフェスにはディレクターが置かれていない。5館の学芸員が集まって議論を重ね、コンセプトやテーマを練り上げていった。これは新しい文化芸術ネットワークの在り方を探り、青森県の文化的多様性とその魅力を伝えていく試みだといえる。
■5館の個性を接続させることで浮かび上がるテーマ
青森市、弘前市、八戸市、十和田市に点在する5館は、文化圏や都市機能の異なる地域でそれぞれ個性的な活動をおこなっている。このプロジェクトは、いわば「芸術文化体験+観光」プロジェクト。各館がゆるやかにつながり、その効果を県全域に波及させていくことを目指すものだ。今年度のテーマ「つらなりのはらっぱ」のもと、5館の特徴を生かした展覧会が開かれ、そして栗林隆《元気炉》という共通企画が各館を巡回する。
■子どもたちが楽しくアートに触れられる、5館共通の鑑賞ツール
アートフェスをより深く楽しむために、子どもや親子を対象とした鑑賞ツールも用意される。具体的には、5館に親しむための情報や作品鑑賞のコツなどアート体験の入口となるコンテンツのほか、各館の展示やプロジェクトに関するワークシートの制作が予定されている(6月中旬以降に配布予定)。
■五つの美術館、アートセンターを軸に、青森の多彩な魅力を体験する周遊プラン
本州最北端に位置し、三方を海に囲まれた青森県は、地域により気候や風土が異なり、多彩な伝統や自然、食文化に恵まれている。このアートフェスでは、そうした魅力を再発見してもらうことを目的に、工芸、建築、自然などをテーマに設定し、国内外および県民や近隣住民にも新しいアートを通じた体験が提案される。
[共通企画]栗林隆 《元気炉》
このアートフェスの会期後半となる8月から最終日にかけて、栗林隆による《元気炉》が開催館を巡回する。栗林は、空間の内と外、自然と人間、人間同士の間にある境界など、あらゆる時代や場所に存在する「境界」に目を向けて、その意味を問い直すような作品を制作してきた作家。《元気炉》は、原子炉の形状をした構造物に薬草の香りを帯びた蒸気を発生させて、観客が中に入って体験することが可能な作品である。
作家がかつてタイに赴いた際、その土地で採取されるハーブを用いたスチームサウナによって、体調不良だった体にエネルギーを取り戻したという経験に由来するものだ。2011年の東日本大震災後に再認識された原発事故の恐ろしさと、持続性の高い自然エネルギーや再生可能な社会に向けた提案とを重ね合わせた構造となっている。原子炉を模した作品の内部空間や周囲に集う人々が、植物のエネルギーを感じることのできるこの作品は、人と自然の境界線上に生まれた場所。AOMORI GOKAN アートフェス 2024のテーマである「つらなりのはらっぱ」を体現するかのように、会場に集った人々が見えざる境界線をまたいで、世界との新たな関係性を構築する機会を生み出そうとしているのだ。
展示スケジュール(予定) ※作品が稼働する日時の詳細は、公式WEBサイトで後日発表
青森県立美術館|8月9日(金)~11日(日)
青森公立大学 国際芸術センター青森|8月14日(水)・15日(木)
八戸市美術館|8月18日(日)・19日(月)・21日(水)
十和田市現代美術館|8月24日(土)・25日(日)
弘前れんが倉庫美術館|8月28日(水)~9月1日(日)
5つの館と各館のメイン企画
青森県立美術館
隣接する三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得た、トレンチ(壕)とホワイトキューブからなる建築が独創的。館内には、シャガールのバレエ「アレコ」舞台背景画のほか、奈良美智、棟方志功、成田亨など郷土作家の作品が展示されている。日本画から洋画、現代アートまでの幅広いコレクションと、演劇・音楽など舞台芸術への取り組みにより、豊かな芸術の魅力を発信する美術館だ。
■メイン企画:かさなりとまじわり
青森県立美術館を設計した青木淳が提唱した「原っぱ」論を援用し、展示室のみならず、コミュニティギャラリーやワークショップエリア、屋外ヤードなども展示やプロジェクトに活用。展示室を含めた諸室をそれぞれの「原っぱ」に見立て、館内外の至るところでアートを発見、鑑賞、体験できる場を設けることにより、美術館全体に大きな「つらなり」を生み出していく。「展示室で展覧会を見て、ショップやカフェに立ち寄って帰る」だけでなく、県立美術館というひとつの街を自由に散策しながら、建築×アートの魅力を美術館全体から体感するものだ。
テーマは「かさなりとまじわり」。美術館を構成する特徴的な各空間が「かさなり」、いくつかのコンセプトに沿って作品がインストールされることで、青森の自然と人間の「まじわり」、死んだものと生きているものの「まじわり」、現代社会のありようとこれから未来を切り拓いていく人たちとの「まじわり」の諸相を浮かび上がらせていく。
・会期 前期:4月13日(土)~6月23日(日)、後期:7月6日(土)~9月29日(日)
・会場 青森県立美術館 地下1階展示室、コミュニティギャラリー、ワークショップエリア、屋外ヤード
・住所 青森県青森市安田近野185
・時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
・休館日 第2・第4月曜日および 5月14日(火)・15日(水)、6月24日(月)~7月5日(金)
・参加作家 原口典之|吉田克朗、吉田榘子|青木淳|井田大介|大森裕美子、大森記詩、吉田有紀、青秀祐|Viirtualion ほか
・URL https://www.aomori-museum.jp/
青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC]
周囲の豊かな自然環境を生かし、建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとした建築が特徴的。アーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)を中心に、ジャンルにとらわれない展覧会、トーク、ワークショップなどが開催されている。春から秋にかけては敷地内の森を散策し、20数点を数える野外彫刻の鑑賞も楽しむことができる施設だ。
■メイン企画:currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って
国際芸術センター青森は、表現活動をおこなう人々が全世界から集い、宿泊しながら地域住民や学生らと交流し、滞在制作するアートセンターである。
この展覧会は、「現在」という意味をもちながら、海流や気流をはじめとして、ある一定の方向に動く水や空気、電流などの変わり続ける流れを示す「current」と、表面や他の流れの下にある目に見え難い流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードとして、ある場所と関わり合いながら表現をつむぎ出す国内外のアーティスト、そして青森ゆかりの表現者たちによる作品が一堂に会するもの。前期と後期の出展作家は同じだが、会期半ばで展示替えをし、異なる二つの展覧会をおこなうことで、一回限りでない場所への働きかけや、変化し続ける「いま」をこの場に取り込むことを試みる。それぞれの表現が発生させる流れや渦のようなものが出会い、交差することで、また新たな流れや渦を無数に生成させていく……実験的なアプローチを通して、我々の現在地を問う企画といえる。
・会期 前期:4月13日(土)~6月30日(日)、後期:7月13日(土)~9月29日(日)
・会場 国際芸術センター青森 ギャラリーA・B
・住所 ⻘森県⻘森市⼤字合⼦沢字⼭崎152-6
・時間 10:00~18:00
・休館日 会期中無休
・参加作家 青野文昭、Jumana Emil Abbound(ジュマナ・エミル・アブード)、岩根愛、是恒さくら、工藤省治、光岡幸一、中嶋幸治、澤田教一、鈴木正治、Robin White(ロビン・ホワイト)、[後期のみ]アイヌの衣服(青森市教育委員会所蔵)
・URL https://acac-aomori.jp/
弘前れんが倉庫美術館
約100年前に酒造工場として建てられた煉瓦造の建物を改修した美術館。「記憶の継承」をコンセプトに、建物本来の姿を残してリノベーションがおこなわれた。建築や地域に根差したコミッション・ワークを重視し、奈良美智、ジャン=ミシェル・オトニエルの作品をはじめとする弘前ならではのコレクションを形成。黒いコールタールの展示壁など空間の特性を生かした現代アートの展覧会が開催されている。
■メイン企画①:蜷川実花展 with EiM:儚なくも煌めく境界 Where Humanity Meets Nature
この展覧会は、写真家・映画監督の蜷川実花が、データサイエンティストの宮田裕章、セットデザイナーの Enzo、クリエイティブディレクターの桑名功らと結成したクリエイティブチーム・EiM との協働により実現する大規模な個展。移ろう時間や流れゆく季節の境界を超える壮大なインスタレーションを発表するほか、蜷川が弘前をはじめ、日本各地で撮影した桜の写真など、人の手とまなざしに育まれた花や木々を捉えた作品群が紹介される。
■メイン企画②:弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考」
青森県南西部に位置し、弘前市を含む津軽平野を流れる岩木川の源流の地でもある白神山地をテーマに実施するリサーチ・プロジェクト。狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣、L PACK. の4組のアーティストたちが、それぞれの視点で、作品展示を始め、ワークショップやトークイベントなどを実施する。
・会期 前期:4月6日(土)~9月1日(日)
・会場 ①弘前れんが倉庫美術館 ②弘前れんが倉庫美術館、HIROSAKI ORANDO、ギャラリーまんなか
・住所 青森県弘前市吉野町2-1、他
・時間 ①9:00~17:00(入館は16:30まで) ②各施設に準ずる
・休館日 ①火曜日 ※ただし4月23日(火)・30日(火)、8月6日(火)は開館 ②各施設に準ずる
・参加作家 ①蜷川実花with EiM[Eternity in a Moment] ②狩野哲郎、佐藤朋子、永沢碧衣、L PACK.
・URL https://www.hirosaki-moca.jp/
八戸市美術館
さまざまな活動を支える巨大な空間「ジャイアントルーム」を取り囲むように、展示室などの専門性の高い個室群が配置された美術館。〈種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館~出会いと学びのアートファーム~〉をテーマとし、八戸の美や文化を伝える収蔵作品をさまざまな切り口で紹介する展示や、幅広いジャンルの企画展、プロジェクトを展開している。
■メイン企画:エンジョイ ! アートファーム !!
八戸市美術館のコンセプト「出会いと学びのアートファーム」をまさに体現する企画。展覧会やプロジェクト、コミュニケーションを種として、そこに訪れた人々が得る出会いや学びが栄養となり、それぞれの感性や創造力が育まれる。美術館は、その畑(ファーム)として、多様な活動の土壌となり、まちの未来を創造していくのだ。 そんな八戸市美術館を象徴する空間「ジャイアントルーム」で、八戸を拠点に活動する5人のアーティストが、来館者と共につくり、楽しむプロジェクトを展開する。作品を鑑賞したり、絵を描いたり、トークプログラムに参加してみたり、ジャイアントルームに滞在するアーティストと交流したり……。絵画や版画、写真、ダンスなど、多様なジャンルで日々繰り広げられる活動により、来館者とアーティストがこの場で出会い、関わり合うことで、まるで畑に蒔いた種のようにどんどん育っていくだろう。
・会期 4月13日(土)~9月1日(日)
・会場 八戸市美術館 ジャイアントルーム
・住所 青森県八戸市番町10-4
・時間 10:00~19:00
・休館日 火曜日(祝日の場合は翌日)および6月26日(水) ※ただし4月30日(火)、8月13日(火)は開館
・参加作家 磯島未来、漆畑幸男、しばやまいぬ、蜂屋雄士、東方悠平
・URL https://hachinohe-art-museum.jp/
十和田市現代美術館
人間と自然をテーマに、草間彌生、奈良美智、ロン・ミュエクなど世界で活躍するアーティストらの作品を常設展示。展示室1部屋に1作品を展示することで、作品の中に入り込むような鑑賞体験ができる。大小さまざまな展示室がガラスの通路でつながれており、アートの家を訪ね歩くような構造が特徴的。館内だけではなく、周辺のアート広場や商店街にも作品が点在し、まち全体がアートを楽しむ場となっている。
■メイン企画:野良になる
日本とアメリカにルーツを持ち、トランスジェンダー女性として生きる在り方を彫刻で表現する丹羽海子。学校教育を離れ、独学でドローイングを柔らかいウールへと変換し風景を描く䑓原蓉子。品種改良や養殖といった人間のコントロールと動植物の生の関係を取り上げ、映像や料理の作品を作る永田康祐。ブラジルに植民地時代以前から伝わる知識をもとに、植物と人間の関係を問い直す作品を制作するアナイス・カレニン。この展覧会では、多様な視点から自然を捉える若手アーティストの表現が紹介される。
・会期 4月13日(土)~11月17日(日)
・会場 十和田市現代美術館
・住所 青森県十和田市西二番町10-9
・時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
・休館日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日) ※ただし、4月22日(月)・30日(火)、5月6日(月)、7月15日(月)・29日(月)、8月5日(月)・13日(火)、9月16日(月)・23日(月)、 10月14日(月)、11月4日(月)は開館
・参加作家 丹羽海子、䑓原蓉子、アナイス・カレニン、永田康祐
・URL https://towadaartcenter.com/
[information]
AOMORI GOKAN アートフェス 2024「つらなりのはらっぱ」
・会期 4月13日(土)― 9月1日(日)
・会場 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館
※この他県内各地での連携企画を予定
・チケット 公式ガイドブック付き5館周遊チケット/一般3,700円(オンライン販売のみ)
※専用サイト[ArtSticker] https://artsticker.page.link/AOMORIGOKAN_ArtsFest24
※5会場それぞれ1回のみ使用可能。
※フェス開催期間中(2024年4月13日~9月1日)有効
※一般(大人)のみの販売。小学生未満は大人同伴に限り入場無料
※販売はオンラインのみ。各館での販売はありません
※定数になり次第、販売終了
※最初に入館する施設の受付で「公式ガイドブック」を進呈
●AOMORI GOKAN アートフェス 2024の展覧会を鑑賞するには、周遊チケット(電子チケット)か、各館ごとに展覧会チケットを購入する必要があります。各館ごとの展覧会チケットは各館WEBサイトをご確認ください。
・TEL 017-783-3000
※AOMORI GOKAN アートフェス 2024 実行委員会事務局(青森県立美術館内)
・URL https://aomori-artsfest.com/