作風も性格も全く異なるが、
良き友、良きライバルとして
互いを認め、認め合った二人
ともに現在の福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志した青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)。日本の洋画が成熟へと向かう時代の流れのなかで、二人はそれぞれに独自の作風を探求した。
青木は東京美術学校(現東京藝術大学)在学中に画壇にデビューし、浪漫主義的風潮が高まる時代にあって、《海の幸》(1904年)で注目を集め、若くして評価される。しかし、華々しいデビューとは対照的に、晩年は九州各地を放浪し、中央画壇への復帰も叶わないまま短い生涯を終えた。
一方、坂本は青木に触発されて上京し、数年遅れてデビュー。パリ留学後は、福岡へ戻り、馬、静物、月などを題材にこつこつと制作に励む。そして87歳で亡くなるまで、長きにわたり静謐な世界観を築いた。
作風も性格も全く異なる二人だが、互いを意識して切磋琢磨していたことは確かだろう。
青木と坂本にとって生誕140年という記念すべき年に開催されるこの展覧会は、約250点の作品で構成されている。二人の特徴や関係をよく表す作品を中心に据え、それぞれの生涯を時に交差させながら「ふたつの旅」を紐解いていくものだ。
展覧会の見どころ
1. 66年ぶりの二人展
青木繁と坂本繁二郎、それぞれの回顧展は節目ごとに幾度も開催されてきた。しかし、二人展となると、1956年に開かれた「青木繁・坂本繁二郎作品展覧会」(旧石橋美術館)以来。同じ年に久留米で生まれた二人の画家の、これまでにあるようでなかった競演を鑑賞しよう。
2. 幻の作品群を公開
青木が伎楽や舞楽などの仮面を写した作品25点を、近年新たに収蔵した公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館。その「仮面スケッチ」と呼ばれる作品群はこれまで長らく非公開であったため、まとまって展示されるのは約40年ぶりとなる。あわせて坂本の滞欧作《眠れる少女》も40年ぶりに公開される。
3. 代表作が一堂に揃う
青木夭折後、坂本は青木作品が散逸するのを惜しみ、石橋正二郎(ブリッヂストンタイヤ株式会社[現・株式会社ブリヂストン]創業者で、ブリヂストン美術館[現・アーティゾン美術館]創設者でもある)にその遺作を集めて美術館を建ててもらいたいという友情の気持ちを漏らした。その縁もあり、現在石橋財団には、青木と坂本の作品が約60点ずつ収蔵されている。同財団コレクションのほか、借用作品も含めた多くの作品が紹介されるこの展覧会では、二人の代表作が一堂に会す。デビュー作から絶筆までに至る青木と坂本の作品を俯瞰できる貴重な機会となるはずだ。
[information]
生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎
・会期 2022年7月30日(土)〜 10月16日(日)
前期展示:7月30日(土)〜 9月11日(日)、後期展示:9月13日(火)〜 10月16日(日)
・会場 アーティゾン美術館 6・5階展示室
・住所 東京都中央区京橋1-7-2
・時間 10:00〜18:00(9月23日を除く金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
・休館日 月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
・入館料 日時指定予約制/ウェブ予約チケット1,600円、当日チケット(窓口販売)1,800円、学生無料(要ウェブ予約)
※ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ、美術館窓口でも当日チケットを販売
※中学生以下はウェブ予約不要
※上記料金で同時開催の展覧会「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市」も鑑賞可能
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル/9:00~20:00)
・URL https://www.artizon.museum