「人間の存在」および「今生きている実感」を追求し、
我々を果てしない迷宮の世界へと引き込む巨大画
自身を取り巻く身近な事象をテーマにしながらも、 その壮大な世界観で観る者に圧倒的な印象を残してきた遠藤彰子 (1947〜)。そんな遠藤作品の魅力に迫る「遠藤彰子展 巨大画の迷宮にさまよう」が6月22日(土)から8月25日(日)まで、新潟市美術館において開催される。「人間の存在」および「今生きている実感」を追求した彼女の油彩画は、縦 3.3 m×横 7.5 mにも達する巨大画へと発展し、我々を果てしない迷宮の世界へと引き込む。本展は約80点の作品を通して、その半世紀にわたる画業を振り返るものだ。
展覧会の見どころ
1.新潟県内では初となる個展
武蔵野美術大学油絵学科名誉教授でもある遠藤彰子による個展は、新潟県内では初開催となる。さらに、新潟市美術館収蔵の『たそがれの街』を特別出品。この貴重な機会をお見逃しなく。
2.半世紀にわたる画業を一挙公開
画家としてデビューした1970年代に描かれた「楽園シリーズ」をはじめ、飛躍のきっかけとなった「街シリーズ」、そして1989年から現在まで続く500号を超える「大作シリーズ」を中心に、立体や新聞連載小説の挿絵といった広範な活動の軌跡が一堂に展観される。
展示構成
●楽園シリーズ
1969年、結婚を機に東京から相模原へ引っ越した遠藤。当時、相模原には森や田園が広がっており、構えた自宅兼アトリエ近くにある林へ入ると、野ウサギや野鳥が多く見られたという。この環境に身を置いていたことのうれしさが創作の源泉となり、「人間と楽園」というイメージを描き始めた。また、「楽園シリーズ」で描かれている象やライオン、サーカスといったモチーフは、1972年に訪れたインド旅行での体験が元になっている。この旅行で「生」と「死」の根源を垣間見たことをきっかけに、これらが内在的なテーマとして以後の作品にも見られるようになった。このシリーズでは、遠藤が「絵を描くこと自体が楽しい幸せな時期でした」と回顧する初期作品をたどる。
●街シリーズ
1970年代後半から始まる「街シリーズ」では、遠藤の心境の変化が画面に現れるようになる。相反する要素が組み合わせられた、恐ろしさと楽しさが同居する迷路のような街が登場するのだ。きっかけは、生まれて間もない我が子が、死に瀕する急病に直面したことに由来する。遠藤は、「その時、今までの世界観が逆転するような経験をしました。幸せそうに暮らしている日々が、何の前触れもなく一瞬にして、暗転してしまう恐ろしさを思い知らされたからです。」と振り返る。この「街シリーズ」によって次々と受賞を重ね、彼女は画家としての地位を確立していった。
●大作シリーズ
1989年に発表した『みつめる空』を皮切りに500号(約2.5×3.3m)の大作に挑むようになった遠藤。これがさらに横に2枚連なった1000号(約3.3×5.0m)、3枚連なった1500号(約3.3×7.5m)という大画面へと発展していった。現在も遠藤は、毎年500号以上の大作に挑戦し続けている。「大作シリーズ」では、これまで「生と死」や「光と闇」、「破壊と創造」といった根源的なテーマを壮大な世界観で描いてきた。うねりのある構図から引き起こされるその躍動感やエネルギーを前に、鑑賞者はまるで絵の中に引き込まれるかのような、不思議な感覚に陥ることだろう。
会期中のイベント
●遠藤彰子による開幕記念講演会
日時:6月22日(土)14:00〜15:30
会場:新潟市美術館 2階 講堂
人数:先着80名
※申込み不要
●ワークショップ「身の回りのものに絵を描いてみよう」
日時:7月27日(土)13:30〜17:30
会場:新潟市美術館 2階 実習室
講師:遠藤彰子(出品作家)
対象:小学生以上(小学生は保護者の付添が必要)
参加費:500円(要当日観覧券)
人数:20名
※ワークショップの詳細や申込み方法については、新潟市美術館公式サイトをご確認ください。
●担当学芸員によるギャラリートーク
開催日:7月7日(日)、8月4日(日)
時間:いずれも14:00〜(30分程度)
※申込み不要、要当日観覧券
[profile]
遠藤 彰子 Akiko Endo
1947年 東京都に生まれる
1969年 武蔵野美術短期大学卒業
1986年 安井賞展安井賞受賞
文化庁芸術家在外派遣研修
2007年 平成十八年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞
2014年 紫綬褒章受章
2023年 毎日芸術賞受賞
公式サイト:https://akiko-endo.com/painter/
[information]
遠藤彰子展 巨大画の迷宮にさまよう
・会期 6月22日(土)〜8月25日(日)
・会場 新潟市美術館 企画展示室
・住所 新潟市中央区西大畑町5191-9
・時間 9:30〜18:00 ※観覧券販売は閉館30分前まで
・休館日 月曜日(ただし7月15日[月・祝]、8月12日[月・振休]は開館)、7月16日(火)は休館
・観覧料 一般1,200円(1,000円)、大学・高校生900円(700円)、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体、リピーター割引料金
・TEL 025-223-1622
・URL http://www.ncam.jp/