展覧会

没後100年 中村 彝 展
―アトリエから世界へ

会場:茨城県近代美術館 会期:11/10(日)〜2025年1/13(月・祝)

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約20年ぶりの開催となる早世の画家・中村彝の大規模個展

茨城県近代美術館では、水戸市出身の洋画家・中村つねの没後100年を記念し、大規模な個展が開催される。37年という短い生涯にもかかわらず、日本近代美術史に偉大な足跡を残した中村彝。その作品は全国各地に所蔵されているが、この展覧会では画家の代表作をほぼ網羅し、重要文化財『エロシェンコ氏の像』(期間限定展示)をはじめ、前回の大規模個展(2003~04年に同館ほかで開催)では出品がかなわなかった『巌』や、約半世紀ぶりに公開される作品など、およそ120点が一堂に会する。また、彝が多大な影響を受けたオーギュスト・ルノワールの『泉による女』が、彝の作品とあわせて展示される貴重な機会でもある。茨城県近代美術館のみの単独開催となるこの展覧会は、美術ファンなら見逃せないだろう。

中村彝《エロシェンコ氏の像》画像

中村彝《エロシェンコ氏の像》 1920(大正9)年 油彩/キャンバス 東京国立近代美術館蔵(重要文化財)
※重要文化財の公開日数の制限に従い、12月22日(日)から28日(土)まで、写真パネルによる展示となります。

展示構成(一部変更になる可能性あり)

1. 士族、書生。― 二十歳前後の中村彝。

2.「新進洋画家」時代 ― 美術家たちとの交流、西洋美術の摂取

3. 中村屋と彝 ― そして伊豆大島へ

4. ルノワール《泉による女》の衝撃 ― これまでは随分無駄をやって居たなア。

5. 下落合のアトリエから
ⅰ)風景画 ―「武蔵野のおもかげ」を愛する
ⅱ)静物画 ― セザンヌから何を学ぶか
ⅲ)人物画 ― ルノワール熱の再来

6. 死を越えて ― 歴史に生きる

中村彝《自画像》画像

中村彝《自画像》 1909-10(明治42~43)年 油彩/キャンバス 石橋財団 アーティゾン美術館蔵

中村彝《婦人像》画像

中村彝《婦人像》 1913(大正2)年頃 油彩/キャンバス メナード美術館蔵

展覧会の見どころ

(1)代表作が勢ぞろい!! 初心者からマニアまで楽しめる
重要文化財『エロシェンコ氏の像』など、彝の代表作が勢ぞろいするこの展覧会では、巡回がないことからも展示替えは素描など一部の作品のみとなる。茨城県近代美術館での展示としては35年ぶりとなる『巌』と『海辺の村(白壁の家)』(1910年、東京国立博物館蔵)。約半世紀ぶりに公開となる『リンゴと瓶のある静物』(1912年頃)や『シスレー「廃屋、フォンテーヌの道」模写』(1918年)。公の展覧会では初公開となる『静物』(1919年、クヴェレ美術館蔵)。彝の個展で紹介されるのは初となる『静物』(1911年、愛知県美術館蔵)および『静物』(1919年、豊田市美術館蔵)等、いずれの作品も必見だ。

中村彝《巌》

中村彝《巌》 1909(明治42)年 油彩/キャンバス 皇居三の丸尚蔵館蔵


(2)彝が半日も絵の前にたたずんだ、ルノワール『泉による女』

彝が活躍した時代の日本には、いまだ西洋の美術作品はほとんどなかった。そのため、当時の美術家たちは、海外の書籍や雑誌に掲載された図版(多くの場合はモノクロ)などから構図や筆致、色遣いまでをも学ぶほかなく、その窓口は極めて限られたものだったという。しかし、当時は西洋美術に関心を持つ実業家などが現われ始め、彼らが購入した美術作品が国内にもたらされたことで、「泰西名画」のブームがまさに興ろうとしていた頃でもあった。岡山県倉敷市の実業家・大原孫三郎が購入したルノワール『泉による女』は、その最初期の作品。当時、伊豆大島に滞在していた彝は、作品が東京の展覧会に出品されることを知ると、急ぎ帰京して会場に駆けつけ、作品を熟覧した。その衝撃ゆえに、後に描いた作品が「余りに今までと異っている」ことに自身でも驚いたようだ。この展覧会では、ルノワール『泉による女』と、影響を受けた彝の作品(『幼児』1915 年など)が会場に並ぶほか、彝をはじめ当時の洋画家たちが観ることのできた、ルノワールやセザンヌなどの海外の画集や書籍も、あわせて紹介される。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《泉による女》画像

ピエール=オーギュスト・ルノワール《泉による女》 1914年 油彩/キャンバス 公益財団法人大原芸術財団 大原美術館蔵


(3)肺結核に冒された彝が、なぜ絵を描き続けられたのか?──心通わせた支援者たち

人生の多くを病床に伏していた彝が、身命を賭して制作に専念できたのは、友人たちの存在が大きかったようだ。彝の絵画制作にかけるひた向きな思いに共感し、その慈愛に満ちた人柄を愛した友人たちは、床に伏せる彝の枕元に集い、親しく語らった。新潟県柏崎市の洲崎すのさき義郎ぎろうは、その代表的な人物である。
遠方に住む彼に送られた書簡は130通を超え、そこに絵画制作における悩みや私生活についても詳しく綴られていたことから、互いに深く信頼を寄せていたことが分かる。また、資金援助の謝礼として洲崎のもとには彝の作品が多数集まったが、そのコレクションをもとに、彝の存命中では唯一となる個展が、柏崎の地で開催された。また、『エロシェンコ氏の像』について、洲崎と、東京における彝の最大の支援者・今村繁三がともに作品を望んだがため、彝が葛藤する出来事などもあったという。この展覧会では、こうした作品にまつわる彝と支援者たちとのエピソードも披露される

中村彝《大島風景》画像

中村彝《大島風景》 1914-15(大正3~4)年 油彩/キャンバス 東京国立近代美術館蔵

中村彝《鳥籠のある庭の一隅》画像

中村彝《鳥籠のある庭の一隅》 1918(大正7)年 油彩/キャンバス

 

[information]
没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ
・会期
 2024年11月10日 (日)〜2025年1月13日(月・祝)
・会場 茨城県近代美術館
・住所 茨城県水戸市千波町東久保666-1
・時間 9:30~17:00(入場は16:30まで)
・休館日 月曜日および年末年始(12月29日~1月1日) ※1月13日(月・祝)は開館
・入館料 一般1,360円、満70歳以上680円、高校生1,130円、小中生550円
※障害者手帳・指定難病特定医療費受給者証等を持参の方は無料
※冬休み期間を除く土曜日は高校生以下無料
※彝の命日の12月24日(火)は満70歳以上の方は無料
・TEL 029-243-5111
・URL https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp

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