和歌山県の田辺市立美術館では、近代の紀南(和歌山県南部)出身者で画家として活動した人物の軌跡を確認し、同地の美術の動向と日本の近代美術史との関係を位置づけて紹介する展覧会シリーズ、『近代紀南の画家』を2018(平成30)年から開催している。
今回の「近代紀南の画家4」では、1866(慶応2)年に紀州藩領伊勢松坂(現在の三重県松阪市)に生まれ、1947(昭和22)年に海南市で亡くなった画家、青木梅岳(本名は元吉)が紹介される。田辺に居住して博物学者・南方熊楠の周辺との交流をもった明治期の作品にはじまり、海南に移住した後、和歌山の風景を描き、表現を充実させていく大正から昭和期の作品までによって、その画業を振り返るものだ。また、梅岳の門弟たちの作品も併せて展観。近代和歌山の画界を彩った梅岳一門の活躍を伝える貴重な機会となるだろう。
また、1998年に旧中辺路町立美術館として開館し、市町村の合併により2005年から田辺市立美術館の分館として新たなスタートを切った熊野古道なかへち美術館では、同じ期間に下記の展覧会が開催されている。2館合わせて訪問してみてはいかがだろうか。
熊野古道なかへち美術館 特別展
妻木良三 侵食する風景
主に鉛筆を用いて、襞が特徴的な山や波、雲といった原初的な風景を想起させる絵画を制作する、妻木良三(1974~)の近年の作品を紹介する展覧会が、和歌山県田辺市の熊野古道なかへち美術館で開催されている。
妻木は和歌山県湯浅町に生まれ、武蔵野美術大学造形学部油絵学科在学中の1998(平成10)年から、鉛筆を用いた絵画制作をはじめ、2001(平成13)年に同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了した。その後、東京で作家として活動した後、2008(平成20)年に帰郷し、自坊の本勝寺で僧職を務めながら創作を続けている。
この展覧会では絵画作品を展示するだけでなく、妻木の絵画の着想のもととなっている布の造形が、インスタレーション作品として初めて公開される。同館の展示室に合わせて構成される空間は、妻木作品の要である、襞の増殖によって侵食してゆく風景のイメージが現れる場となることだろう。山々に囲まれた熊野古道なかへち美術館の中に生まれる、妻木の山のような、あるいは波のような襞の空間を体感しよう。
会場:熊野古道なかへち美術館
住所:和歌山県田辺市中辺路町近露891
会期:2023年4月15日(土)~6月18日(日)
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
観覧料:400円
※学生及び18歳未満は無料
電話:0739-65-0390
URL:https://www.city.tanabe.lg.jp/nakahechibijutsukan/index.html
[information]
近代紀南の画家4 青木梅岳
・会期 2023年4月15日(土)~6月18日(日)
・会場 田辺市立美術館
・住所 和歌山県田辺市たきない町24-43
・時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
・休館日 月曜日
・観覧料 260円
※学生および18歳未満は無料
・TEL 0739-24-3770
・URL https://www.city.tanabe.lg.jp/bijutsukan/index.html
※最新情報は両館のホームページでご確認ください。