展覧会

退蔵院・壽聖院 特別公開
「村林由貴が描く禅の世界」

会場:妙心寺塔頭 退蔵院・壽聖院 会期:2022/12/24(土)〜2023/1/9(月・祝)

五輪之画 地の間 蓮池図(部分)

五輪之画 地の間 蓮池図(部分)

11年の歳月をかけた渾身の大作が遂に完成
76面の襖絵「五輪之画」を公開

妙心寺の塔頭(大寺院の敷地内にある独立寺院)である退蔵院で2011年春に始動した「退蔵院方丈襖絵プロジェクト」。このプロジェクトは若手芸術家の育成や、職人の技術と素材および道具の継承、既存の文化財の保全を目的とした画期的な企画として国内外から注目を集め、2019年には平成三十年度文化庁長官賞表彰に選出された。

妙心寺 退蔵院 方丈 提供:退蔵院

退蔵院方丈

退蔵院方丈襖絵プロジェクトとは

1597年に建立された退蔵院の方丈には、狩野光信の高弟で、探幽らとともに活躍した狩野了慶によって描かれた重要文化財の襖絵が納められていた。しかし、400年以上にわたって守られてきた襖は、保存の観点から取り外されることとなった。
そこで、絵師や技術者と協力し新たな襖絵を生み出すプロジェクトを発案したのが、退蔵院副住職の松山大耕氏。なぜなら、現代ではデジタル技術を使った精巧な複製を作ることが可能だが、それでは同じものの再生産にしかならないうえ、人が育たないのではないかと懸念したからだ。また、「寺社仏閣は伝統や文化財を守るだけではなく、人を育て成長させる場でもある」との考えもあった。

五輪之画 水の間 波濤双鷹図(部分)

五輪之画 水の間 波濤双鷹図(部分)

21世紀にふさわしい新たな文化財を創出するため、方丈の襖絵76面をすべて新調するための絵師の選定がおこなわれた。その条件は、京都にゆかりがあること、才能とやる気があり、若く無名の画家であること。約30名の応募の中から、厳しい審査を経て襖絵制作を託されたのは、当時24歳の村林由貴だった。
採用当初は、寺に住み込みで創作に励んだ村林。彼女は単に絵を描くだけではなく、禅僧を育てる僧堂での坐禅修行にも足を運び、自身を鍛錬することも大切にしたという。

五輪之画 火の間 白梅図(部分)

五輪之画 火の間 白梅図(部分)

現代の日本にある最高の素材を後世に伝える目的も持つこのプロジェクトでは、和紙から墨、筆、舞良戸まいらどや襖に至るまで、すべて最高の素材が揃えられた。また、水墨による襖絵制作の技術を次世代に伝えるために、素材の製法や技術も詳細に記録。そして2022年5月、様々な苦難を乗り越え、プロジェクトメンバーが約11年を捧げた襖絵『五輪之画』が遂に完成したのだ。

五輪之画 風の間 青松烏図(部分)

五輪之画 風の間 青松烏図(部分)

退蔵院方丈(本堂)の襖絵を制作する“絵師”に抜擢されたのは、兵庫県出身の画家・村林由貴。彼女が約11年の歳月をかけて描いた76面の襖絵が、2022年12月24日から2023年1月9日まで、同院で特別公開される。さらに村林がアトリエとして過ごした、通常は非公開である塔頭・壽聖院では、方丈・書院の襖絵も観ることができる。
両院に納められた襖絵から、村林自身の変化や制作の軌跡、描かれた動植物たちの溢れる生命力を感じてほしい。

五輪之画-空の間-雪中柳鷺図(部分

五輪之画-空の間-雪中柳鷺図(部分)

公開される襖絵について

■退蔵院方丈 五輪之画
襖絵のタイトルにある「五輪」とは、仏教において宇宙の万物を構成する、地水火風空の5つの要素。退蔵院方丈は、かつて宮本武蔵が逗留し、研鑽を積んだとも伝えられる。武蔵が著した「五輪書」に因み、方丈の5室をそれぞれ「地・水・火・風・空」の部屋とし、全体をひとつの宇宙に見立てることが村林に託された画題だった。作家自身が「何を以って、地水火風空とするのか」を捉え、表現したこの大作は、構想に約8年、本描きに約3年を要したという。
五輪の心理を映し出した方丈を一巡することで、宇宙の万物を感じ取ることができるだろう。

■壽聖院方丈・書院 襖絵
妙心寺の塔頭のひとつ、壽聖院をアトリエとしたことをきっかけに、2012年から約1年半の間、壽聖院方丈と書院の襖絵を描く機会を得た村林。プロジェクトが始まった当初、24歳で大学院を修了したばかりの彼女にとって、水墨画や禅の世界に触れることは初めての経験だった。作家が実際に筆を持ち、作品を生み出した空間で襖絵を味わうことができるのは貴重な機会だ。

両寺院では期間中、通常非公開のエリアも拝観可能となるほか、特別な御朱印も用意される。ぜひこの機会に、趣深い冬の京都に足を運んでみてはいかがだろうか。

村林 由貴 Yuki Murabayashi
兵庫県神戸市出身
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)情報デザイン学科卒業、同大学院芸術研究科修士課程修了
2008 年「AMUSE ARTJAM in Kyoto」グランプリ
「JEANS FACTORY ART AWARD 2008」優秀賞

2009 年「GALLERY RAKU 2010」プロジェクト賞受賞
2011 年「退蔵院方丈襖絵プロジェクト」の絵師に抜擢

提供:退蔵院

退蔵院 池泉回遊式庭園「余香苑」

退蔵院 池泉回遊式庭園「余香苑」

※掲載画像の提供はすべて退蔵院

[information]
退蔵院・壽聖院 特別公開「村林由貴が描く禅の世界」
・会期 2022年12月24日(土)〜2023年1月9日(月・祝)
・会場 妙心寺 退蔵院・壽聖院
・時間 9:00~17:00
※1月7日・8日・9日は、壽聖院は10:00~16:00
・拝観料 退蔵院:一般1,000円、小人500円、壽聖院:一律600円
※1月7日・8日・9日は、壽聖院は一律800円(「京の冬の旅」特別公開による案内付)
■退蔵院
・住所 京都市右京区花園妙心寺町35
・電話 075-463-2855
・URL http://www.taizoin.com
■壽聖院
・住所 京都市右京区花園妙心寺町44
・電話 075-462-3905
・URL https://www.jusyoin.com

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