展覧会

企画展「遊びの美」

会場:根津美術館 2022/12/17(土)~ 2023/2/5(日)

桜下蹴鞠図屏風(右隻)の画像

重要美術品 桜下おうか蹴鞠図けまりず屏風びょうぶ(右隻) 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

金屏風の競演など
新春の華やかな雰囲気が漂う
遊びをテーマにした展覧会。

あなたは「遊び」と聞いて、どのようなイメージが浮かだろうか。
歴史に目を向けてみると、公家が和歌の上達につとめた歌合うたあわせや家の芸にまで高めた蹴鞠けまり、武家が武芸の鍛錬として位置づけた乗馬や弓矢などは単なる遊楽ではなかった。遊びは、人が楽しみながら社会の中でより良く生きる術を身に着ける手段であり、日々の暮らしに潤いを与えるもの。人が生きる上で欠かすことのできない存在なのである。
文化としての遊びの諸相を、屏風を中心に館蔵の絵画や古筆などによって紹介するこの展覧会。新春を迎えるにふさわしい、華やかな金屛風の競演などが味わえる。

貴族の遊び

平安時代の公家の遊びの一つに歌合が挙げられる。左右に分かれて和歌を詠み、その優劣を競うものだが、彼らにとって歌を詠むことはコミュニケーションの重要な手段であり、必須の教養でもあったのだ。一方、『源氏げんじ物語ものがたり画帖がじょう 第十七帖「絵合えあわせ」』に描かれているのは、宮中での絵の論評の流行を受け、藤壺中宮ふじつぼのちゅうぐうが女房らを光源氏の後援する梅壺女御うめつぼのにょうご権中納言ごんちゅうなごんの娘である弘徽殿女御こうきでんのにょうごの二手に分けておこなわせた絵合。この絵合も歌合と同様、ものの優劣を競う「物合ものあわせ」の一種である。

源氏物語画帖 第十七帖「絵合」の画像

源氏物語画帖げんじものがたりがじょう  第十七帖「絵合えあわせ」 伝 土佐光起とさみつおき筆 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

また、同じく平安時代に盛んになった蹴鞠は、貴人たちが屋外で楽しんだ今でいうスポーツの一種。鹿革の鞠を蹴り、回数や姿勢の美しさを競うこの蹴鞠は、やがて鞠道きくどうとして形式が整えられた。また、飛鳥井あすかい流などの流派が形成されるなど、その技が専門的に高められていくことになる。本展では、満開の桜の木のもとで蹴鞠を楽しむ様子を描いた重要美術品『桜下蹴鞠図屏風おうかけまりずびょうぶ』(記事最上部の作品)などの作品を紹介する。

武士の遊び

乗馬や弓矢の技術を競う犬追物いぬおうものや狩猟などの武家の遊びには、武芸の鍛錬という側面もあった。『玉藻前物語たまものまえものがたり絵巻えまき』は、鳥羽院の寵愛した美女・玉藻前が、実は二尾をもつ老狐とわかり、これを退治する物語。狐退治の命を下された上総介かずさのすけ三浦介みうらのすけの二人が、狐をしとめるために武芸を磨く様子が描かれている。馬上から先端に覆いを付けた矢で犬を追う犬追物は、鎌倉から室町時代にかけて、武家で盛んにおこなわれた遊びだ。

玉藻前物語絵巻(部分)の画像

玉藻前物語絵巻たまものまえものがたりえまき(部分) 2巻のうち下巻 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵

源頼朝が自身と幕府の権威を天下に示すため、富士山の裾野で繰り広げた巻狩りの場面が描かれているのが、『曽我物語そがものがたり屏風びょうぶ』。武家の棟梁として御家人の支持を得るには、武芸に堪能であることを示す必要があったのだ。

曽我物語図屏風(右隻)の画像

曽我物語図屏風そがものがたりずびょうぶ(右隻) 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

庶民の遊び

江戸時代になると、太平の世を背景に庶民の経済力や行動範囲が拡大。これに伴って祭礼や社寺参拝が娯楽や観光を兼ねるようになった。そしてこれらが共同体の結束を強め、人々の見聞を広めることになる。『邸内ていない遊楽ゆうらく屏風びょうぶ』は、遊里の豪壮な建物の内部や庭で展開される様々な遊興の様子を描いた作品。子供を腕に乗せる曲芸や双六すごろく、腕相撲に興じる姿が見られるなど、登場人物はそれぞれ気ままに振る舞っている。左上の座敷に描かれているのは、江戸時代には庶民も楽しむようになった『平家物語』を語る琵琶法師の姿だ。

邸内遊楽図屏風の画像

邸内遊楽図屏風ていないゆうらくずびょうぶ 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

同時開催展情報

今回、根津美術館では、企画展「遊びの美」以外にも様々な展示がおこなわれている。ここでは、その中から展示室5で開催中の「山水」を紹介しよう。
日本や中国の山水画で重要視されたのは、理想的な自然の情景を描くことだった。この展覧会では多彩な表現で描かれた『潑墨山水図はつぼくさんすいず』など山水画の優品を鑑賞できる。

潑墨山水図の画像

潑墨山水図はつぼくさんすいず 拙宗等揚せつしゅうとうよう筆 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵 茂木克己氏寄贈

 

[information]
企画展「遊びの美」
・会期 2022年12月17日(土)~ 2023年2月5日(日)
・会場 根津美術館 展示室1・2
・住所 東京都港区南青山6‐5‐1
・時間 10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
・休館日 月曜日 ただし1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)休館
※年末年始 12月26日(月)〜 1月4日(水)は休館
・入館料 オンライン日時指定予約/一般1,300円、学生1,000円、中学生以下は無料
※障害者手帳提示者及び同伴者は、一般1,100円、学生800円
※当日券(一般1,400 円)も販売、ただし混雑状況によっては販売しない場合もあり
・TEL 03-3400-2536(代表)
・URL https://www.nezu-muse.or.jp

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