展覧会

時を超えるイヴ・クラインの想像力
─不確かさと非物質的なるもの

会場:金沢21世紀美術館 会期:2022/10/1(土)〜 2023/3/5(日)

金沢21世紀美術館で10月から開催されている展覧会「時を超えるイヴ・クラインの想像力 ─不確かさと非物質的なるもの」。これは、国内では37年ぶりとなる、イヴ・クラインを中心に構成された展覧会だ。34年という短い人生を駆け抜けたクラインの取り組みと、時代を超えて共鳴する芸術家たちの革新的な挑戦とその軌跡が紹介される。

吸い込まれるような青の世界に
イヴ・クラインは何を求めたのか

「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」という鮮やかで深い青色で知られる、イヴ・クライン。荒廃した戦後の「タブラ・ラサ(白紙還元)」とも言える状況から、彼は新しい人間性を探求する作家として、彗星のごとく登場した。

イヴ・クライン《海綿レリーフ(青)RE-42》 制作年不詳
海綿、小石、顔料、合成樹脂/板 93.5×73.5cm
滋賀県立美術館蔵

 

詩人のクロード・パスカルと彫刻家のアルマンとともに過ごしたニースの浜辺で、3人で「世界を分割する」ことを思いついた20歳のクライン。彼が欲したのは「青空」だった。空に向かって署名することで、空とその無限性を作品として手にしたとされるエピソードは、彼の「非物質性」「精神の自由」「空間への飛翔」「宇宙的な想像力」への関心を示している。
クラインは「青」を最も非物質的で精神的であると考えた。1958年に何も展示されない、通称「空虚」展を開催したことはあまりにも有名だが、その後彼は、「青」に代表される色や火、水、空気などを用いたアクションやパフォーマンスをおこなうことで、物質として見せる芸術ではなく、「感性」を通して触れられる芸術を目指したのだ。

イヴ・クライン《人体測定(ANT66)》画像

イヴ・クライン《人体測定(ANT66)》1960年
水性メディウム/紙、キャンバス 157×311cm
いわき市立美術館蔵

イヴ・クライン 《人体レリーフ(マルシアル・レイス)―PR2》画像

イヴ・クライン《人体レリーフ(マルシアル・レイス)―PR2》1962年
顔料(青)、合成樹脂、ブロンズ、金で彩色された板

178×94×33cm
彫刻の森美術館(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団)蔵

イヴ・クラインの生きた時代

戦後の荒廃した状況から立ち上がり、新しい人間像を探求したクライン。当時は彼のほかにも、自分の身体や物質、空間の関係をゼロから見直すような実験的な芸術の試みとして、「空間主義運動」(イタリア)や「ゼロ」(ドイツなど)、「具体」(日本)などが展開された時代でもあった。本展の展示内容からは、イヴ・クラインを中心に、ルーチョ・フォンタナやピエロ・マンゾーニ、草間彌生、白髪一雄などの同時代の作家に共通する「非物質性」というテーマが浮かび上がる。

白髪富士子《無題》画像

白髪富士子《無題》1955年頃
和紙など 107.5×77cm
 個人蔵

イヴ・クラインと現代作家

本展には、時代を超えクラインの創造的実践につながるキムスージャ、ハルーン・ミルザ、布施琳太郎、トマス・サラセーノの現代作家4名を招聘。特に、ミルザと布施によるサイトスペシフィック*な作品は、この展覧会のために制作された新作だ。
我々が生きる時代は、気候変動やウイルス、インターネット情報環境など無数の「見えないもの」が起こす混乱で溢れ、不確かで実体が見えない。その中においてクラインの非物質性が生み出す感性や精神性の探究は、ポストインターネット世代を含む現代の芸術家たちの創作にインスピレーションを与えている。「見えないもの」に対する鋭い視点と柔らかな感性で捉えた、現代における非物質性の探求から生まれる表現を楽しんでほしい。

この展覧会は、「いま、ここにないもの」を感じ、想像し、不確かな現在を乗り越えていく喜びと力を与えてくれるだろう。

*場所や空間の特性を活かした作品のことを主に指す

ハルーン・ミルザ《Light Work xi》画像

[展示作品参考イメージ]
ハルーン・ミルザ《Light Work xi》2017年
© Haroon Mirza; Courtesy Lisson Gallery. Photography by Jack Hems.
協力:スカイザバスハウス

[展示作品参考イメージ]布施琳太郎画像

[展示作品参考イメージ]
布施琳太郎

Yves Klein, Leap into the Void,

Yves Klein, Leap into the Void, 1960
5, rue Gentil-Bernard, Paris, France
© The Estate of Yves Klein c/o ADAGP, Paris
Photo © : Harry Shunk and Janos Kender J.Paul Getty Trust.
The Getty Research Institute, Los Angeles. (2014.R.20)

■出品作家
イヴ・クライン/今井祝雄/エンリコ・カステラーニ/金山明/キムスージャ/草間彌生/トマス・サラセーノ/白髪一雄/白髪富士子/ルーチョ・フォンタナ/アルベルト・ブッリ/布施琳太郎/ピエロ・マンゾーニ/ハルーン・ミルザ/元永定正/ギュンター・ユッカー 他

 

Portrait of Yves Klein made on the occasion of the shooting of Peter Morley
"The Heartbeat of France" February 1961
Charles Wilp's studio, Düsseldorf, Allemagne
© The Estate of Yves Klein c/o ADAGP, Paris
Photo © : Charles Wilp / BPK, Berlin

イヴ・クライン(1928〜1962)
わずか34年余りの人生のうちに、数々の傑作を生み出し、世界的にも高く評価されているフランスのアーティスト。
1958年にはギャラリーに何も展示されていない、通称「空虚」展で物議を醸した。
その後も、「非物質的な感性の領域」の実験をはじ
め、火や金箔、海綿といった自然のエレメントを取り入れた作品や、ピンク、青、金といったモノクローム作品など、多くの作品を生み出した。
心臓発作のためパリで死去、享年34歳。

同時開催
アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]

《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》画像

《SCAN THE WORLD [STAGE: COLLECTIVE BEHAVIOR]》2018
photo by たまえ

 

金沢21世紀美術館では、長期インスタレーションルームにて「アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]」も開催中だ。

SCAN THE WORLD(STW)は、石毛健太(1994年、東京都生まれ)とBIEN(1993年、東京都生まれ)の2名のアーティストが中心におこなっている、ハンディスキャナで街をスキャニングするプロジェクトの総称。STWは路上表現の現在形のうちの一つであり、同時に誰もが参加できる新しい遊びでもある。

石毛健太とBIENは金沢に長期滞在しており、参加者を募りながらSCAN THE WORLDを実践している。STWは、まちに開かれ、金沢21世紀美術館をスタート地点に、プレイヤー達とともに、現在進行形の路上の遊びとしての進化を続ける。

■アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME]
・会期 2022年10月1日(土)~2023年3月19日(日)
・会場 金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム
・料金 無料
・ウェブサイト https://www.scan-the-world.net

■関連プログラム
SCAN THE WORLD [BONUS STAGE : PURESU]
開催日:2022年12月17日(土)、18日(日)
時間:11:00〜17:00(昼休憩有り、途中参加有り)
受付時間:上記時間にて随時(当日受付、先着順)
会場:金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム
定員:25名程度
参加費:無料

石毛 健太(左)、BIEN(右)

石毛 健太(左)、BIEN(右)

 

 

 

 

 

 

[information]
時を超えるイヴ・クラインの想像力―不確かさと非物質的なるもの
・会期 2022年10月1日(土)~2023年3月5日(日)
・会場 金沢21世紀美術館 展示室5〜12、14、光庭2
・住所 石川県金沢市広坂1-2-1
・電話 076-220-2800
・時間 10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
・休場日 月曜日(ただし1月2日、1月9日は開場)、12月29日(木)〜1月1日(日)、1月4日(水)、1月10日(火)
・観覧料 一般:1,400円(1,100円)、大学生1,000円(800円)、小中高生500円(400円)、65歳以上1,100円
※( )内はウェブチケット料金 ウェブチケット購入ページ
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
※入場当日に限り「コレクション展2 Sea Lane –Connecting to the islands 航路– 島々への接続」も入場可能
・URL https://www.kanazawa21.jp

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