展覧会

よめないけど、いいね!
-根津美術館の書の名品-

会場
根津美術館
会期
7/16(土)~ 8/21(日)

「よめないけど、いいね!」ポスター

根津美術館が所蔵する
大切に伝えられてきた書の名品を
わかりやすく紹介する展覧会。

どんな名品が展示されるとしても、「昔の人の字は読めないから苦手だ」「何が書いてあるのかわからないからつまらない」などと、書の展覧会は敬遠されがちだ。もしかすると、「日本の文字だから読めるのが当然なのに、自分は読めない」という後ろめたさがあるのかもしれない。もちろん、書かれた内容を正しく理解するには、“読むこと”が必須。しかし、それはひとまず活字本に譲るとしよう。

たとえ読めなくても、肉筆の書そのものの魅力に触れることはできる。例えば、一文字ひともじの形の美しさを愛でる。あるいは、“つづけ文字”の線が奏でるリズム、紙の装飾と書かれた文字とのハーモニーを感じる、など。

実は、昔の人たちも、皆が皆すらすらと書を読めたわけではない。その一例が、近世初期の茶の湯の世界に見られる。当時、高僧の希少な墨蹟(直筆の書)は尊重されていた。その一方で、墨蹟を茶掛に仕立てるため、茶室のとこの寸法に合わせて切断されたりもしたのだ。

根津美術館所蔵の書の名品を軸に構成したこの展覧会。先人たちにより時代を超えて伝えられてきた作品の見どころがわかりやすく紹介される。「よめないけど、いいね!」と実感することが、書の作品をさらに深く鑑賞するためのきっかけとなるだろう。

展示作品について(抜粋)

まさか釈迦の骨を漉き込んだ紙?と驚く
その堂々たる書風と、かつて東大寺に伝来したことから、江戸時代の鑑定家が聖武しょうむ天皇の筆蹟として「大聖武おおじょうむ」と名付けた作品。紙の原料であるマユミの木の粗い繊維、または脂肪成分とされる粒子を釈迦の骨の粉末に見立てた荼毘紙だびしと呼ばれる料紙に書かれている。

「大聖武」画像

大聖武おおじょうむ 伝 聖武天皇しょうむてんのう筆/日本・奈良時代 8世紀/根津美術館蔵


よめないけど、スピード感が気持ちいい

金銀の絵具で華麗な下絵を描かれた料紙の上を、ためらいもなく動く筆のスピード感が魅力的な作品。筆者の藤原定信は当時20代半ばだった。その後、42歳から23年間をかけて計5000巻以上の「一切経」をひとりで写すという偉業をなし遂げた。

「石山切」画像

石山切いしやまぎれ 藤原定信ふじわらのさだのぶ筆/日本・平安時代 12世紀/根津美術館蔵 小林中氏寄贈


まさか切り取られているとは

さすが高僧の書は格調が高い。しかし、江戸時代の記録と照合したところ、冒頭5行と小字部分の1行目が切りつめられていることが判明した。茶の湯の掛物とするために切断、再構成されたのである。最初から読むことを放棄した作品だといえる。

「無学祖元墨蹟」画像

重要文化財 無学祖元むがくそげん墨蹟ぼくせき 附衣偈ふえのげ断簡だんかん/日本・鎌倉時代 弘安3年(1280)/根津美術館蔵


書いた順を無視してはよめない

桃山から江戸初期にかけての能書として名高い本阿弥光悦。しかし、彼はプライベートな手紙ではこれほどまでに奔放な筆遣いを見せている。文章が長いときは最初の余白にもどり、さらには本文の各行の間にも書き込む。右から順に読んでも文はつながらない。

本阿弥光悦「書状」画像

書状しょじょう(部分) 本阿弥光悦ほんあみこうえつ筆/日本・桃山時代 慶長10年(1605)/根津美術館蔵

同時開催展情報

今回、根津美術館では、「よめないけど、いいね!-根津美術館の書の名品-」以外にもふたつのテーマ展示がおこなわれる。
展示室5では「歌人のおもかげ―能面と装束でたどる―」と題し、歌人を登場人物とした演目をいろどる能面と装束が、館蔵品の中から選りすぐって紹介するのだ。

「出目洞水」画像

中将ちゅうじょう 焼印「出目洞水でめとうすい」/日本・江戸時代 享保6年(1721)/根津美術館蔵

また、展示室6では「暑中しょちゅうりょう ―夏の茶道具取り合わせ―」と題し、涼しさを演出することで、心地よい空間を作り出す真夏の茶会のための茶道約20件が展示される。

[information]
企画展「よめないけど、いいね!-根津美術館の書の名品-」
・会期 2022年7月16日(土)~ 8月21日(日)
・会場 根津美術館
・住所 東京都港区南青山6‐5‐1
・時間 10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
・休館日 7月18日(月・祝)を除く毎週月曜日、7 月19 日(火)
・入館料 オンライン日時指定予約/一般1,300円、学生1,000円、中学生以下は無料
 ※障害者手帳提示者及び同伴者1名は、一般1,100円、学生800円
 ※オンライン日時指定予約の定員に空きがある場合のみ、当日券(一般1,400円)を受付で販売
・TEL 03-3400-2536(代表)
・URL https://www.nezu-muse.or.jp

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